SNS活用のヒント

catch-img

友達とリスト


「思い切って30人くらい削除したよ。昨日の夜。」 彼女は唐突に言った。疑問符が張り付いた私の表情を見て彼女が言葉を継ぎ足した。 「Facebook(フェイスブック)の友達リストの話だよ。」 ああ、と私はうなずき、なぜ急に整理したのかを問う。 「うーんとね、昨日の夜、ものすごく暇だったんだよ。で、Facebookのプロフィールとか、写真とか、思い切ってメンテしようと思ったの。ログインしたら、20人くらいの友達がオンラインになっていたんだ。暇だし誰かとチャットしようかなと思って、誰がいるのかをよく見てみたらさ、その中の誰とも特にチャットで話したくなかったんだよね。」


数の魔力

私もなんとなくそんな時があるような気がした。それから、特に話したくない人からチャットに誘われて、適当にごまかして、切断したことも思い出した。でも私は友達リストにある人のことを削除したりはしない。 なんで急にそんなに一気に削除したのかと尋ねる。彼女は、目を左上にやって少し考えてから言った。 「私の中で友達リストがただの数を集めるものになっていたことがあって。」 ふたたび、ああ、そんな時があったな、と思う。空前のFacebook登録ブームがアメリカに来たのが数年前。日系人の私もその渦の中にいた。パーティーなどで誰かと出会うと、お互いに名前を名乗ったあと必ず「ところで、Facebookやっている?」と聞いたものだ。そして、友達登録。一度だけしか会ったことのない人達のステータスアップデートを今も日常的に目にしている。 「数が多いことが私の人気が高いこと、私の影響力が高いことの証明に思えていたんだよ。100人を超えないとだめだと思っていたし。とにかく質より数。いろいろな人とやり取りができるっていう殊勝な理由ではなくて、単に数字の問題。」


連鎖的につながる友達関係

一時期、友達のリストの中から別の友達を見つけ出し、追加登録をして人数を増やすのに夢中になっていたこともあった。今でも、時々とても懐かしい人から急に友達追加のメッセージを受け取るが、その人達も別の友達のリストから自分を発見したのだと思う。登録した友達のリストをたどってさらに友達を見つけていく作業は、友達の人数というステータスだけでなく、自分の築いてきた人間関係を再確認するようなものでもあった。 アメリカ人のFacebookの平均フレンド人数は130人だという。これくらいまで集めると、みんななんとなく友達集めに飽きて、登録の条件を急に厳しくするようだ。彼女は続けた。 「自分の友達リストを見ていたら、オンラインでもオフラインでも仲良くしている人って5人くらいだった。オンラインだけの友達でも、頻繁にやり取りしている人は友達だなと思うんだけど、何年も前に数回会った人とかって、素性もよくわからないし、結構怖いなと思ったりさ。」


ゆるいつながりと強固なつながり

私は自分の友達リストを思い浮かべる。大学時代の友達や前の職場の同僚などもリストに入っているが、正直私の中で彼らは「かつて友達だった人あるいはかつて日常的に顔を合わせていた人」だ。だが、完全につながりを切るということもわざわざするまでもないと思っている。彼女は続ける。 「毎年ホリデーシーズンに入るとさ、なんとなく自分の友達の棚卸するよね。あの人にはあれを贈ろうとか、あの人はパーティーで会おうとか。遠い友達はどんどん遠くなっちゃうんだけど、最近はFacebookがかろうじてつなぎとめていてくれるところがいいなと思っていたよ。」 その気持ちはよくわかるな、と思ってうなずいた。幅の広いゆるいつながりは限られた強固なつながりよりも、多くの可能性とチャンスを生むことがある。情報の拡散にはゆるいつながりは必須だし、センスのあう友達からシェアされる面白い情報には間違いが少ない。


音を全部拾う耳

人間の耳の優れた機能の1つが、たくさんの音がある中で必要な情報のみを選別し、他の情報はシャットダウンすることである。 Facebookでは、誰も彼も自分の日常生活をステータスアップデートとして投稿することを楽しみ、他人のそれを見ることを楽しんでいる。しかし、毎日毎日流れてくる誰かのステータスアップデートは、混雑した街ですべての人の声や街の喧騒を忠実に拾ってしまう耳をつけられたような感覚にさせられる。そして私が本当に聞きたい音はどこにあるのか見失うのだ。彼女は、自分の耳をコントロールするために、友達リストを削除したのかもしれない。


自分が削除されたら?

私は彼女に自分が誰かに友達リストから削除されたらどう思うかを聞いてみた。 「自分が仲がいいと思っていた人から突然削除されたら戸惑うな。多分、何か怒らせたのかもしれないと思って、こっちから連絡をとるよ。でも、大して仲良くない人から削除されても私は気づかないと思う。そんなもんだよ。きっと私が削除した30人も気づいていないと思うよ。」 友達リストは私たちの人間関係を見える化して、見えなかった友達の関係の強さも意識させるようになった。そして本当の友達が誰かなのかもわかるようにしたのかもしれない。 友達を削除するという言葉だけ見ると、とてもネガティブで悲しいことに思えるけれども、友達リストを見て関係の深さを確認するのは、健全な人間関係を築く上でとても大事なことのような気がした。私も家に帰ったらリストを見なおそう。最近、更新のないあの人にメッセージを送ろう。

深谷歩
深谷歩

株式会社 深谷歩事務所 代表取締役 ソーシャルメディアやブロクを活用したコンテンツマーケティング支援として、サイト構築からコンテンツ企画、執筆・制作、広報活動サポートまで幅広く行う。Webメディア、雑誌の執筆に加え、インタビュー取材による導入事例作成、記事作成なども行う。 著書 『コストゼロでも効果が出る! LINE公式アカウント集客・販促ガイド』(翔泳社、共著)、 『自社のブランド力を上げる! オウンドメディア制作・運用ガイド』(翔泳社)、 『たった1日でも効果が出る! Facebook広告集客・販促ガイド』(翔泳社) 他多数

人気記事ランキング

カテゴリ一覧

タグ一覧