日本のSNSの今がわかる!3大ソーシャルメディア×津田大介

Interop2013の6月12日に行なわれた基調講演では、「日本のSNSはどこに向かうのか~3大ソーシャルメディアに聞く、展望と戦略~」と題されたパネルディスカッションが行われました。登壇したパネリスト、モデレーターの方は以下のとおりです(敬称略)。

<パネリスト>

杉本誠司(株式会社ニワンゴ 代表取締役社長)

舛田淳(LINE株式会社 執行役員)

藤本真樹(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者 開発本部長)

<モデレータ>

津田大介(有限会社ネオローグ 代表取締役社長 ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)

これまでとは桁違いの規模のWebサービス

津田大介氏

本日は、日本のSNSはどこに向かうのかというテーマで、日本を代表するSNSの方々にお話をうかがいます。最初にそれぞれ自己紹介をお願いします。

ニワンゴ杉本氏

ニコニコ動画のユーザー数は3,306万人で、そのうち有料会員がもうすぐ200万人に到達しそうです。ニコニコ動画の1日あたりの平均滞在時間は1時間8分。これは、ほかのサイトやサービスとは比較にならないくらい群を抜いた数字です。

先日開催したリアルイベントのニコニコ超会議の来場者は2日間で10万人、ネットからの視聴者は500万人に達しています。

グリー藤本氏

グリーは2004年にSNSサービスとしてスタートしましたが、いろいろサービスを変えて現在に至っています。

グリーIDは4,000万人、デイリーのPVとしてはトリオンには届きませんが、ビリオン単位です。

LINE舛田氏

LINEの現在のユーザー数は1億7千万人です。今年の初めに1億人に達しましたが、それ以降の伸び率が非常に高くなっています。全ユーザーのうち、日本国内のユーザーはおよそ3割で、あとは海外ユーザーです。

コミュニケーション総数でいうと、デイリーで50億コミュニケーションが発生しています。スタンプを使ったメッセンジャーサービスとVoIPを中心にサービスを世界的に拡大しています。

SNSと社会の動き

津田大介氏

各社とも、かつてないほどのユーザー数、それにまつわる通信量になっていますね。ここで、最近のSNSの状況をまとめてみましたので、紹介しましょう。

世界的にSNSが注目され、社会を変えるツールになるのではと考えられるきっかけになったのが2011年のアラブの春です。

以降、SNSは誰もが使える情報インフラになり、それによりどんどん情報の流通速度が速まるようになりました。一方でデマの問題などもあるのですが。

その象徴的な事例を紹介しましょう。

まずは、昨年のオバマ大統領の再選のツイート。現在は80万RTにまで達しています。このツイートは、テレビが再選を報じるよりも早く、オバマ大統領自身がツイートして、選挙結果がみんなに知れ渡ることになりました。

オバマ大統領のツイート

また大統領選挙の時には、みんなが候補者のテレビ討論に合わせて、#Debateというハッシュタグをつけて選挙についてTwitterで議論しました。ツイートの総数は1千万ツイートに達し、1秒間で16万ツイートを記録したこともありました。こうした一般の人達の議論を受けて、次のテレビ討論のテーマが決まるということもありました。

#debateのついたツイートの分析(Topsyより)

こちらは、先日の橋下市長の「スマイルプリキュア」というツイートです。これは11万RTに達しました。このツイートがネット上で大いに話題になったということは、後日テレビで話題になりました。

スマイルプリキュア

昨年の首相官邸前デモでは、20万人がデモに参加しました。その人達がデモについての情報を得た経路を調べてみると、Twitterが37%で最も多く、継いでWebが20%、人づてが17%、Facebookが10%となっています。これで8割以上です。残りはテレビが4%、団体の告知が3%となっていますが、圧倒的にSNSが動員のきっかけになっていることがわかります。

こうしたことから、動員の革命は起きたといえます。SNSを動員に使うことはできる、ではその次に、人が集まった先に何をしていくかということが今日のテーマにもなっていくかと思います。

ネット選挙によってネット有名人が当選する可能性も

津田大介氏

1つのトピックとして「ネット選挙の可能性と課題」があります。

ネット選挙のメリットとしては、ネットを上手く使うことで、地盤、看板、鞄という3バンに頼らない新しい議員が誕生する可能性があること、ネットでの発信により選挙コストを下げることができること、国民がじっくり各候補者の主張を見て選ぶことができること、政見放送がオンデマンドで見られるようになること、ネットの動員力を街頭演説などに活かせること、クラウドファンディングなどにより個人献金が可能になることなどがあります。

一方で、デメリットとして、PR合戦は相変わらず必要でネット以外にも従来のビラやポスターなどの配布は必要であるためにコストが増加すること、ネガティブキャンペーン対策やなりすまし対策があります。また、ネットでの人気者が票を獲得するようになるかもしれず、新たなポピュリズムを生む可能性もあります。

メリットデメリットがあるネット選挙ですが、解禁になったことでネットと政治の関わり方も変わってくるはずです。1つはビッグデータと政治ということで、Twitterをはじめとしたネット上の声を分析して世論の動向をみたり、みんなの関心が集まる論点を知ることができます。

審議中の案件に対してリアルタイムでパブリックコメントを出すこともできますし、政治家に直接メッセージを伝えることでバーチャルロビーイングのようなこともできます。前述したように、参院全国比例区の場合でもあれば、ネットの有名人が当選するということもありえますし、これまでとは違う新しい議員の当選の仕方ができるかもしれません。

セグメント化されたコミュニティが集まったニコニコ動画

津田大介氏

という現状を踏まえて、3社さんにお話を伺いたいと思います。最初のテーマとしては、新しい情報流通網になったSNSとマスメディアの住み分けです。

まずニコニコ動画というのは、テレビの敵なんでしょうか。

ニワンゴ杉本氏

かつては、テレビから非常に敵視された時代もありました。コンテンツを流すというところでかぶる部分もありますから。

しかし、今の解釈としては従来の放送とインターネットのサービスは異なる存在だと認識しています。その理由が従来のマスの形成とニコニコ動画のコミュニティの形成が異なるということです。

ニコニコ動画は、多様な世界観を持つセグメントが多数あって、それが1つの集合体になっています。つまり、小さな輪としてのコミュニティの累計としてニコニコ動画になるわけです。それぞれのセグメントで、深く濃密な議論がされていて、非常にニッチなのですが、それが集まった時にマス的なものになっています。

ニコニコ動画

津田大介氏

セグメントされた中で、コンテンツとして何がコミュニティを引っ張っているのだと思いますか。

ニワンゴ杉本氏

誰かが自己主張をしたいと思ってコンテンツを作る、ということが価値になっているとおもいます。誰かがあげたコンテンツを見ている人がまたさらにシェアしていくことで、そのコンテンツが広がる。これが繰り返されることでサービスを引っ張っていきます。動画を作る人がいて、見る人がいてそこでコミュニケーションをするということがサービスのコアです。

最近は、テレビの裏実況だったり、放送後の反省がニコニコ動画で放送されるということもあります。こうした企画の一部はニコニコ動画のほうから提案することがあります。テレビの裏の部分についてみんなの前で濃密な会話がされるようになるわけです。

ネット党首討論会はどういう経緯で開催にいたったのか

津田大介氏

去年は、ニコニコ動画で党首討論会が開催されましたが、どういう経緯できまったのでしょうか。

ニワンゴ杉本氏

党首討論会は明確な意思を持って企画したと言うわけではなく、ぼんやりとネットを使って何か象徴的なことをやりたい、新しい何かを起こしたいという思いがあった時に、ちょうど当時の野田首相や安倍総裁がネットで議論をしようという話があったので、それにのっかった形で実現しました。そして構成を期すために、全党で議論できる場を作り、その上で有権者みんなの意見を交わせるようにしたいということで、あのような形になりました。

CM放送5年目だからこそわかるテレビとネットの違い

津田大介氏

グリーさんは、CMなどを使って従来のマスメディアとも上手につきあっていますね。

グリー藤本氏

グリーがテレビCMを放送してから5年が経ちますが、この5年の経験を通してインターネットメディアと従来のメディアの性格の違いを感じています。5年間の経験を積むことでテレビCMのノウハウなども溜まっています。マスメディアしかできないこと、インターネットでしかできないことを理解して、その上で使い分けていくことが出来ると思います。一方でニコニコ動画は、いろんなコミュニティがあって、それが一緒に並んでいるので、非常におもしろいし、うらやましいと思っています。

ニワンゴ杉本氏

ニコニコ動画は匿名ユーザーが多いので、コンテンツはオープンですが、コミュニティ自体は閉鎖されている感じで、テレビとはやはり異なるものですね。

グリー藤本氏

タレントを起用したCMなども含めて、テレビと近い立場でいろいろ取り組んできたところ、予想以上の効果を感じています。5年間続けているのはそこに効果があるからです。試行錯誤の中で、テレビからインターネットにどうやって接続させるか、コンバージョンさせるかということを検証しています。わかりやすい例でいえば、最後にURLを載せるのと、キーワード検索をうながすのではどちらがいいのかということです。今流れているCMのほぼ全てが検索になっているところで、結果はわかると思いますが・・・。

テレビとは分断されたインターネットにどうつないでいくかは、まだいろいろ検証中です。

インターネット3周目にぴったりハマったLINE

津田大介氏

LINEはマスの力を使わずに、口コミで伸びって行ったと思います。なんでここまで急成長できたのでしょうか。

LINE舛田氏

LINEがテレビCMを始めたのは、一定数のユーザーを獲得したあと、さらにモンスターになるための施策が必要だったからです。

では、なんでそれ以前の時点でそこまで成長できたのか?これについては、よく聞かれるのですが、「タイミング」とお答えしています。

今はインターネットの3周目だと考えています。1周目はパソコン、2周目は携帯、そして3周目がスマートフォンです。

いつの時でも、キラーコンテンツになるのはコミュニケーションです。パソコンの時は、パソコン通信があり、そこから広まりました。その後、コンテンツが増えて検索など付加価値を持ったサービスが生まれてきます。携帯の時は、メールコミュニケーションです。

デバイスが代わってもコミュニケーションというニーズは変わりません。ニーズを満たす形が変わるだけです。

LINEのようなクローズドでスモールなコミュニケーションがユーザーの今のニーズにあったのでしょう。これには、Facebook、Twitterなどパブリックなコミュニケーションが全盛だったという背景もあります。反動としてスモールグループへのニーズがあり、それを活性化させるLINEのコンセプトが合致したのでしょう。

ユーザーが知りたい情報のみにしぼるための公式アカウント制度

津田大介氏

LINEは公式アカウントが充実しています。Twitter、Facebookの公式アカウントブームの中で、後から入ってきたLINEですが、非常に効果的にうまくやっていると思いますが、強みはどこにあると思いますか。

LINE舛田氏

圧倒的にユーザーがいることです。デイリーのユーザー数で2400万人ほどいて、これはドコモ、AU、ソフトバングのユーザー数を足したのとおなじくらいです。リアルタイムで、毎日使うというサービスであるから、公式アカウントも効果的です。

もう一つ、公式アカウントはLINEが許可したものでないと作れないということがあります。LINEとして提供したいアカウント、つまりユーザーが欲しい情報しか配信できないという仕組みにしたところが強みです。

公式アカウントとしては、首相官邸がありますが、北朝鮮がミサイルを発射したとき、NHKなどのテレビが報じるよりも早くLINEのアカウントから発信されたということがありました。

津田大介氏

それは、LINEは公共の情報インフラの1つになったといえますが、責任も重くなりますね。

LINE舛田氏

LINEは通信事業者として登録していますし、ネットワークに障害があれば報告義務があります。

そうした中でインターネットに閉じない形で、オフラインと接した部分でインフラになりたいと考えています。

そうしたなかで「あけおめLINE」は象徴的です。あらかじめ通信量が爆発することは承知していたのですが、携帯の3キャリアとホットラインを作ってどんな状況でも対応できるよう万全の仕組みを作りました。

スマホがネットの常識を変えていく

津田大介氏

今後、PCのインターネットはなくなって、スマホに移行していくのでしょうか。

グリー藤本氏

さらにスマホに移行していくのは間違いなく、PCを使う時間は減っていくでしょう。技術に詳しくない人たちはとくにその傾向が強く、自分も母親にiPadをプレゼントしたら、PCを一切使わなくなりました。

すべての人達のPC利用がゼロになるかはわかりませんが、今後テレビなどの家電もネットワークに繋がるようになって、スマートデバイスも普及したらいったん落ち着くのではないでしょうか。

ニワンゴ杉本氏

ニコ動に限れば、まだPCベースのユーザーが多いのが現状です。スマホ対応はもちろんのこと、ニコ動をもっと楽しめるためのインタフェースは強化をしたいと思っていて、その部分では少し危機感を感じています。

各社はどこに向かうのか?

津田大介氏

今後のSNSとして、どういう発展や組み合わせがあると思いますか?

LINE舛田氏

昨年の夏にLINEチャンネルというプラットフォーム構想を発表しました。LINEユーザーのコミュニケーションがいきるサービスとして、ゲーム、電子書籍、占いなどをプラスしていくという考えで、LINEがゲートウェイ、あるいはポータルの存在になりたいです。

公式アカウントは、ローソンのクーポンはすでに数十万人が店舗に行って、レジでスマホを見せてからあげくんと引き換えています。そのついでに、他の商品も購入する。ドラッグストアのマツモトキヨシもクーポンのおかげで、売上が上がったことを公式に発表しています。

スマホは、オフラインとの接点になり得ます。PCはオンラインに閉じてしまいがちですが、24時間持ち歩いているスマホであれば、絵空事ではないO2Oが実現できます。

中小企業向けのLINE@は、いずれ全商品、全店舗、全ブランドに持ってほしいと思っています。LINEは、決済やチケット販売などの付加的なサービスにもつながると思います。

グリー藤本氏

現在はコミュニケーションのレイヤーがたくさんある時代です。各種サービスによって、ユーザーの振る舞いや発言も変わってきます。どう使うかはユーザーが決めることです。個人的には、O2Oとして広がるものがある一方で、オンラインだけで完結するサービスも増えていくと思います。

津田大介氏

グリーのライバルは、今どこになるのでしょうか?ガンホーはパズドラで伸びていますが、DeNAは見ているところが違ってきているように思います。

グリー藤本氏

今後のライバルというわけではありませんが、いろんなフィードがあるなかでLINEがいいいなぁと思っています。ゲーム業界でいうならば、先輩のプレイヤーたちです。共存も出来ると思うので、どうやったらうまく一緒にできるかを考えて行きたいです。

津田大介氏

ニコニコ動画はニコニコ超会議などでO2Oで成功しているように見えますがどうでしょうか。

ニワンゴ杉本氏

かつては、リアルで発生した話題をネットが追っていましたが、今は逆転しています。今はまだ分断されていますが、今後O2Oという形でSNSがリアルな社会にマージされていくと思います。

グリー藤本氏

インターネットサービスは、技術的にもアイデアでもたくさんの可能性があります。SNS、ゲーム、メディアという中から世界を変えるようなことをやって行きたいと思います。

LINE舛田氏

コミュニケーションは最上のコンテンツです。かつては、ユーザー2000万人の壁といわれてきましたが、いろんなサービスが増えたことで、社会インフラといえるようになったんではないかと思います。LINEは海外でも1億人以上に使ってもらっているので、世界的なインフラを目指して行きたいです。

まとめ:ネットの住民とそれ以外の人の温度差を超えるサービス

日本のSNSサービスということで、狭義の意味でのソーシャルメディアとは異なる観点からの議論がもう少し深まればもっと興味深い議論になったように感じました。

ニコニコ動画はやはりネットの住民のものであり、それ以外の一般の人とは大きな隔たりがあり、温度差があります。一方で、LINEやグリーのサービスはその壁を超えて普及したことで、O2Oでの利用も普通しつつあります。

ただし、ネット選挙というところでは、3社の明確な意見は聞けませんでしたが、スマホでネットにアクセスしている層にとってどれくらい影響があるかというと、ネット選挙元年の今年に限れば、選挙結果を左右するような影響にはならないのではないかと考えます。

各政党とも、程度の差はあれ今いろいろな手法を試している段階です。すでにネットでの情報発信を行なっている候補者にとってはこれまでと変わらないし、付け焼刃的に始めた人の場合はネットでの発信が選挙結果に大きな影響力を持つには至らないでしょう。ネットの有名人も選挙で当選するレベルまで知名度のある人はほぼ皆無で、ネットの有名人と選挙で勝てる有名人の間には大きな隔たりがあります。

3社のサービス特性、将来の方向性が異なるので、講演タイトルにあるような日本のSNS全体の方向性は見えませんでしたが、海外でさらにユーザーを伸ばしたいLINE、クローズドなコミュニティの中のコンテンツ力でオフラインにも力を入れたいニワンゴ、ゲームプラットフォームあるいはSNSとして何か新しいものを作りたいグリーという立場の違いがわかるパネルディスカッションでした。

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