ソーシャルメディアに強い組織を作る!伊東屋の中の人と話してわかった3ポイント

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「社内のソーシャルメディアの理解が低いので、Facebookページなどを作りたくても作れない」

こんな悩みを聞くことがある。知名度が高く、B2Cの企業、つまりソーシャルメディアを顧客接点の一つとして活用することで、さらに価値が高められる可能性のある企業のご担当者からもこうした声を聞くことがあり、非常にもったいないなぁと感じる。

ある日、Facebookを見ていたら「Facebookチームが社内の年間最優秀賞をいただきました!」という投稿が。

投稿されたのは、東京・銀座にある老舗文具店の伊東屋さんのFacebookページ。魅力的な店舗が人気の同社でなぜ「Facebook」が社内で評価されたのか。ここに組織内でソーシャルメディアを根付かせるためのヒントがあるのではないかと思い、インタビューさせていただいた。

伊東屋のWeb周りをすべて担当ー顔は出さない主義の中の人

今回インタビューにご協力いただいたのが、Facebook運用チームの富永尚之氏だ。所属はeコマース部で、文具を始めとした各種商品のオンライン販売に関連する業務を担当されている。Webサイトの設計・コンテンツ制作に加え、伊東屋のFacebook、Twitterもその業務の一つとしている。

基本、顔出ししない中の人という立場だそうで、今回は後ろからのお写真だ。

きっかけは、災害の時の情報発信

Facebookページをはじめるきっかになったのが、2011年3月の震災だという。当時、ユーザーに向けて告知できるツールは、Webページしかなかった。Webページの更新をするには、テキストなどを用意して、コーディングして、さらにWebサーバーにファイルをアップするという作業が必要になる。

「当時、お店の営業時間の情報などをお客様に知らせようがありませんでした。震災の経験がきっかけの一つになっています」と富永氏。

そして、もう一つが企業による「Facebookページ運営が当たり前になってきた」(富永氏)ことがあるという。

この二つをきっかけとして、富永氏自身が「Facebookページの運営」を会社に提案した。

社長に直訴してFacebookページを開始

Facebookページの運用というアイデアを思いついてから、富永氏はソーシャルメディアやFacebookに関係する書籍をよみあさって勉強した。

その上で、ソーシャルメディアマーケティングの宣伝効果などについてPower Pointにまとめ、社長をはじめとした役員に対してプレゼンした。

「Facebookを通して、伊東屋を知ってもらい、そこから集客できたらいいということを伝えました。ただ、この時同時に費用対効果はわからない、測れないということは伝えました。Facebookをやったからって、必ず売上が上がるとは限らない、ということもしっかり説明しました。」(富永氏)

プレゼンの結果、Facebookページを始めることについて、特に反対されることはなく了承されたが、「役員陣は最初は格別な期待を寄せているというわけでもなかった」と富永氏。

運用を始めてからは、Facebookページに人が集まり始め反応が得られるようになっていることを社長に報告し、効果を数値で実感してもらうように努めた。

100年以上の歴史を持ちながら、積極的に新しいツールを導入していける社風には、現在の社長の影響もあるという。社長は現在40代の若い社長で、「そもそも新しいツールや方法などを扱うのに長けている社長なので、すんなり理解していただきました」と富永氏は語る。

そして会社の年間優秀賞受賞!

年間優秀賞についての詳細を尋ねたところ、伊東屋では毎月「バリューアップ賞」という表彰制度がある。これは、会社に対して貢献した人やチームに授与されるものだ。以前Facebookチームが受賞したが、先日さらにその中の年間最優秀賞として表彰されたのだという。

理由はもちろんFacebookを通したコミュニケーションで、伊東屋を世に知らしめたことだ。また、新しいことにチャレンジすることが評価されたという。

しかし、富永氏は「社内で正しく評価されることはうれしいのですけれど、Facebookページの運用を楽しんでやっているので、賞がなくてもよいという気持ちです。お客様から毎回直接評価ををいただいているようなものなので、それに答えていくようにしています。お客様から『つまらない』といわれないようにすることが使命です」と謙虚だ。

なお、Facebookページの効果測定という意味ではほとんどやっていないという。「数値だけみてもあまり意味はない」(富永氏)というのがその理由だ。

「Facebookというサービス自体がそもそもいつまで続くかわからないので、そこにあまり頼りすぎるのもよくないと考えています。FacebookもTwitterも、情報発信のための一つのツールとして使うしかないというスタンスです。」(富永氏)

コストはかけずにすべて内製、かける時間は1時間

伊東屋のFacebookページの投稿は写真とそれにつけられたテキストのクオリティーが高い。投稿のネタ集めや作成も富永氏が基本的に一人で行っている。運用のためのコストや時間について聞いてみた。

「Facebookページのための外注コストはかけていません。全部、自前で作成、運用しています。Facebookの運用のための時間としては、夕方5−6時くらいと決めていて、それ以上の時間はかけないようにしています。投稿の回数は1日に1回です。投稿する時間はおよそ決めていて、夕方5時半ぐらいと、朝一番です。」(富永氏)

朝一番の投稿は、伊東屋の本店のクリップと青空を写した写真。この他にも、オリンピック選手の凱旋パレードやiPhone5発売日の長蛇の列など、銀座の時事ネタなども投稿している。

夕方の投稿は、文具の写真とストーリー。ニュースフィードに流れてきたときに、はっと目をひく写真も富永氏が撮影している。写真の説明には、いつも【】付きのタイトルがついて、その下にストーリーが書かれている。

伊東屋では以前、店舗の様子をクイズにして投稿する企画も行っていた。この企画はユーザーも反応しやすく、しかも店内のこだわりの装飾も紹介できるところがおもしろく、私も以前REXの記事「Facebookページで写真を使いこなそう」にて紹介したことがあるが、これも富永氏の企画だったという。

もちろん、社内でネタを募って投稿することもある。

「各部署のマネージャーが集まる会議などで、ネタを募集することもあります。ネタのたたき台をもらって、投稿するような感じです。自分で売り場を歩いて見つけられればいいのですが、なかなか時間がとれないので、社内の人の協力も重要です」とのこと。

ネタが見つからないときはどうするのだろう。

「ネタがつきたときは、投稿しないです。無理にあげてもしょうがないですし。」(富永氏)

「毎日投稿!」をルールにしてしまうと、投稿すること自体を目標にしてしまう場合があるが、ネタがないときはあげない、という割り切ったスタンスも運用者には参考になるのではないだろうか。

また、伊東屋のWebサイトには、Facebookページの説明を記したページ「Facebook 伊東屋公式ページのご案内」も用意している。FacebookやFacebookページを利用していない人にも、わかりやすい説明だ。

このページは、「eコマース部のメンバーから『案内ページがあったほうがわかりやすい!』という提案があって作成しました。」(富永氏)

社内で情報を循環させる

実際にお客様がFacebookページを見て来店されるということはどれくらいあるのだろうか。

「お客様がFacebookの情報を見て来店されるということもあるようなのですが、私たちは売り場に立っているわけではないので、そこまで詳しい情報は入ってきません。でも、売り場の担当者からたまに『Facebookから来店してくれた人がいた。取り上げてくれてありがとう』と言われることがあります。」(富永氏)

ウォールの投稿の反応としては、「Facebookの性質もあって、ポジティブなものがほとんど」(富永氏)という。

「ただ、まれにクレームのようなコメントが入る時もあります。投稿の内容とは関係なく、『○○の売り場で対応が悪かった』というような来店時の体験の投稿がされるときがあります。こうした時は、売り場の担当者に伝えて、対応、改善してもらうように伝えます。

反対にお客様からいただいたお褒めの言葉も売り場にフィードバックとして、その部門のマネージャーに伝えています。」(富永氏)

Facebookに寄せられたお客様からの声をきちんと吸い上げ、良いことも悪いことも、組織として共有する。これは基本的なことだが、ソーシャルメディア運用の中でも肝になる部分でもある。

クチコミで広まるFacebookページ

伊東屋のFacebookページの「いいね!」数は、2012年9月現在16,000を超えている。ユーザーはどうやって集めたのだろうか。

「Facebookページを始めたときに、月3万円の予算でFacebook広告を出稿してユーザーを集めました。その後は、広告は使っていませんが、毎日少しずつ増えていっています。

目的がファンを増やして何かをやろうということではなく、伊東屋のことが好きだったら「いいね!」してつながってくださいね、というスタンスでやっていますので、無理に増やさなくてもいいと思っています。

今、また広告を出してみたら「いいね!」は増えそうですが、3万人集めても、5万人集めても、結局は投稿を読んで興味を持ってくれる人がいないと意味がないと思っています。」(富永氏)

伊東屋のFacebookページを「話題にしている人」は、およそページの「いいね!」の10%から20%。活性化しているページだと言えるだろう。ユーザーからのクチコミリーチから「いいね!」をしていないユーザーにも情報が広まって、じわじわと「いいね!」が伸びている理想的なページの成長だ。

(「話題にしている人」については、Rexの「クチコミの可視化!「話題にしている人」の価値を再考する」で詳しく解説しているので参照して欲しい)

Facebookページでつながることの価値

最後にFacebookページに参加しないリスクについて聞いてみた。少し考えた後、富永氏は「参加しないリスクというのはまだないと思う」と答えた。

「Facebookページやっていますか、と聞いてみて、やっていないからダメということにはならなくて、『ふーん』くらいですかね。

実際に自分が運営してみて、情報を発信し続けることのメリットは大きいと感じますが、やっていなかったらまずかったのかというと、そこまでのものではないと思います。

自分たちで発信できるツールができたのはうれしいですが、企業によっては発信する必要がない場合もあるでしょう。自分の場合は、『やらない理由がない』から始めたという部分があります。

Facebookページを運営することで、お客様と直接つながりができるのはいいことだと思います。Webサイトなどとは、全然違って、やはり会話ができることが大きいです。」(富永氏)

まとめ:Facebookを社内に浸透させる3つのポイント

今回のインタビューで、伊東屋のFacebookページが社内の活動として評価されているポイントは、以下の3点にあるといえるだろう。

まずはトップから説得する

富永氏が「Facebookページを始めたい」と思った後の行動は組織で新しいことを行う上での王道とも言える、説得用資料を用いた役員へのプレゼンテーションだ。こうした形で了承を得て、その後も成果を報告して価値を理解してもらう努力をすることで、社内全体の取り組みとして受け入れられたのだといえる。

協力を仰ぎフィードバックを返す

トップの理解が得られたら、同僚の理解も得なければならない。「ネタの協力をお願いする」「良いことも悪いことも、Facebookから得られたお客様からのフィードバックを現場に返す」という二つを実践することで、実際に運用していない他の社員にも、自分のこととして関わってもらうことに成功している。

コスト、労力をかけすぎない

富永氏とお話していて感じたことは、Facebookページの運用は、無理をせずに楽しみながら行っているということだ。もし、コストをかけていたらもっと運用評価がシビアになっていたのかもしれないが、負担のない範囲で続けているために、自然な形で運用が続いている。

「社内でソーシャルメディアの活用が進まない」「運用しているけれど社内の理解が浅く評価されない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてもらいたいポイントだ。

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