Fコマース:売上を超えたメリットを探る

Facebookをコマースに活用するFコマースの現状や効果について具体的な事例やデータを見ながら考えてみましょう。

Fコマースについては、「Facebookクーポンだけじゃない!Fコマースの実現方式あれこれ」という記事で、以下の二つに分類しました。

Facebookで直接販売する系

・Facebook上の店舗(Facebook内で商品の閲覧、購入、決済まで可能)
・Facebookポイント

Facebookを使って販売促進する系

・Facebookアプリを使って外部ECサイトと連携
・Facebookクーポン
・Facebookチェックインクーポン
・Facebook開発者ツール

今回は、Fコマースの現状と効果、将来的な予測などについて、データを中心に考えてみましょう。

2015年には3兆円の市場になるという予測

アメリカのコンサルティング会社Booz & Companyが2011年に発表した、ソーシャルコマースについてのレポート「Turning ‘Like’ to Buy”: Social Media Emerges as a Commerce Channel」によれば、2015年の世界のソーシャルコマースの市場規模は、2011年と比較して56%成長し、世界全体では300億ドル(約2兆4千億円)になると予測されています。この市場規模拡大予測は、Fコマースが大きく影響することも示されています。

なお、これはアパレルや電子機器、映画チケットなど、実際の商品の販売に関わるもののみを対象にしており、サービスは含まれていません。サービスも含めたらより大きな市場規模になるでしょう。

現状:Facebookは販売の場としてふさわしくないという議論

一方で、2012年に入ってから、Facebookにオンラインストアを構えたいくつかの企業が撤退しました。

特に、2012年2月にBloombergが発表した「Gamestop to J.C. Penney Shut Facebook Stores」というレポートでは、ゲーム関連のGamestop、アパレルのGap、デパートの J.C. PenneyとNordstromがFacebookページ上のストアを閉めたことを取り上げました。

この話題は日本国内でも注目され、「Facebookにコマースは向かない」という論調が強くなりました。

理由:Facebookページにはアクセスしない

理由の一つに、Facebookの仕組みとして、一度「いいね!」したページに再びアクセスすることが少ないことが上げられています。Facebookページは、一度「いいね!」をすると、そのページの更新情報がニュースフィードに届くので、わざわざFacebookページを見に行く必要がないからです。Facebook内のお店などは、Facebookページからアクセスする仕組みになっているため、どうしても利用率が下がってしまいます。

結果として、アクセス数も伸びないし売上も立たないのなら、他の手法に投資しようということで、Facebook上の店は閉店するという流れになります。

理由:Facebookでは「買いたい」気持ちが弱い

もう一つ、Fコマースが販売につながらない理由として、ECサイトやメールマガジン、Googleのリスティング広告などに比較して、Facebook上のショップ(あるいはECサイトへのリンク)でのクリック率、コンバージョン(目標アクションへの到達、購入や資料請求など)率が低くなることがあげられます(参考:Webinar: The Case For and Against Facebook Commerce)。

それも当然のことで、ユーザーがAmazonにアクセスするのは、欲しい商品や気になる商品があって、その価格や詳細を知りたいことが動機になっていることが多く、またGoogle検索するときも、ある程度欲しい物が決まった上で検索するということがあります。特定の商品の購入意欲や興味が高まってから利用するAmazonやGoogleでは、その性質上クリック率、コンバージョン共に高くなります。

Fコマースの活かし方の例

ではFコマースはどう活かすことができるのでしょうか。

Facebook上で直接決済可能なショップを閉店させたJ.C. Penneyの現在のFacebookページにアクセスしてみると、「jcp shop: April」というアプリが用意されています。アプリを使ってみると、以下のように動作します。

4月のおすすめ商品というのが表示されるので、任意の商品カテゴリにチェックしてフィルタリングします。複数のアイテムが表示されます(②)。それぞれにマウスを乗せるとアイコンが反転して、Facebook上で商品についてコメントしたり(③)、外部のECサイトに連携できる(④)ようになっています。

J.C. Penneyでは、直接販売する仕組みよりも、しかけ(月毎におすすめアイテムを表示)を用意して、販売促進につなげるというFコマースを実践しているということになります。

もっともこの事例も実験段階であると思われ、トライアンドエラーを繰り返しながら、よりユーザーが楽しみながらショッピングができる方法を模索しているところだと考えられます。

Fコマースに取り組むメリット

Facebookで直接決済が行えるお店を1−800Flowersが開いたのが2009年で、それから約3年が経ちます。Fコマース全体の効果として外部ECサイトへのFacebookからの参照トラフィックの増加、リピート顧客の増加、購入額の増加などをあげている事例も増えています。ではどんな成果の具体例があるのかを見ていきましょう。

成果の具体例

・「いいね!」ボタンを組み込んだLevi’sのECサイトへのFacebookの流入が40倍に。
・Facebookアカウントで ShoeDazzle.com(靴のオンラインショップ)にログインするユーザーは、一般ユーザーに比べて50%リピート購入する率が高い。
・incipio(PCケースなどの販売)のオンラインショップでは、Facebookからの流入が2番目に多く、Facebookからのユーザーは一般のユーザーに比べ3倍ショッピングカートに商品を入れ、購入に至るのは一般ユーザーの2倍。

ただし、もちろん、この効果に懐疑的な人もいます(例:もともと購入額の多い人がFacebookページに「いいね!」をして、Facebookの情報から流入しているだけなど)。では、マーケティングとしてFコマースの効果がどこにあるのかを整理し、Fコマースの特徴を浮き彫りしてみましょう。

ユーザーの期待に答える

ユーザーがFacebookページに「いいね!」をする理由については、いくつかの調査データがあります。どの調査でも、ユーザーは「ディスカウントや特別割引」に期待というのが上位にランクインしています(参考:「いいね!」する理由、取り消す理由:新指標はどう影響するか?)。これは、2012年3月に発表された、 Constant Contact と Chadwick Martin Baileyによる調査データ(10 Facts About Why and How Consumers “Like” and Subscribe)でも同様です。

上記データからもわかるように、最も多いのが「ディスカウントや特別割引」で41%と最も多くなっています。

Facebookページに「いいね!」をしているユーザーだけにオファーを提供する仕組みによって、「特別感」を感じてもらうFコマースの実現方式はいくつかあります。

日本でも利用できるようになった「Facebookクーポン」も「いいね!」をしているユーザーに一番にクーポンを配布する仕組みです(2011年4月現在国内では一部の企業のみ利用可能)。

Facebookアプリの「Re-buy」では、Facebook上で決済までできるお店を出し、任意の商品に対して「かわいい」「きれい」など投票することで、割引が適用できる「いい割引」という機能を提供しています。これも、ユーザーの期待に応えるFコマースの仕組みです。

ユーザーの声を知る

これまでのマーケティングでは、アンケート調査や、ユーザーを集めて面接調査する「フォーカスグループ」という調査手法などを使って、生活者のインサイトを知るという取り組みが行われてきました。

こうした手法に加えて、Facebookでも実験的な取り組みを行うことで、生活者の行動パターンや期待を知ることができます。

例えば「Facebookクーポン」は、無料で配布することができますが、配布した結果としてどのくらいのユーザーにリーチできるのか、そしてどれくらいのユーザーが利用するのかということを調べることができます。クーポンのパターンを変えたり、有効期限、利用可能日など条件を変更することで、もっともユーザーが来店する動機になるクーポンは何かということを分析することもできるはずです。

それ以外にも、Facebookユーザーに先行して販売する取り組みなどを行うことで、人気の商品や傾向(価格や仕様)をつかむこともできるでしょう。

ブランドロイヤリティを高める

Facebookページを使ってつながり続けることは、ユーザーに長期間にわたって様々な情報を届け続けることができるということです。

ソーシャルコマースの購買心理への影響」でも述べたように、ユーザーは一度購入して、その体験に満足している場合、同じ店から購入する可能性が高くなります。

初回限定で思い切ったディスカウントや無料サービスで体験してもらい、その品質を知ってもらい、再購入をうながすという方法は、サービスによってはFacebook上で実践しやすいものがあります。

名刺デザイン・制作サービスの「Moo.com」は、Facebookのタイムラインのカバーを使ったFacebook用の名刺作成サービスを初回無料で行っています。私も試してみましたが、品質、サービスなど満足いくものでした。海外のサービスなので、通常であれば敷居が高いのですが、無料で試して満足いけば、次回有料であってもオーダーしようという気になります。

情報を届け続けるということも、ユーザーの好感度や興味を高く維持したままでいられるということです。アクセサリーショップのトロールビーズは、ほぼ毎日コーディネート写真を投稿しており、これがユーザーのリピート購入につながっているはずです。このお店では、ビーズのセットの組み合わせをユーザーの投票で決めるなど、前述した「ユーザーの声を知る」というメリットも活かしています。

ユーザーが支援者になる

外部のECサイトに「いいね!」などのFacebookの技術を使って連携すること、あるいはFacebookと外部のECサイトを連携させること、Facebook内にお店を置くことは、ソーシャルメディア上でのクチコミや、友達同士でのシェアを簡単にする方式でもあります。

これによって一般のユーザーが、友達にすすめてくれる支援者に変わります。さらに、Facebook内のストアで見つけた商品をシェアしたり、コメントする以上のアクションをとってもらうこともできます。

上手な仕組みの一つが「Starbucks Card eGift」です。これは、Facebookの友達のStarbucks Cardにチャージできる仕組みで、「Starbucks Card」というプリペイドカードのチャージを友達にもできるようにしたものです。

ユーザーが友達を選んで、メッセージカードを作成し、チャージする金額、相手が受け取る日付を決めます。友達のウォールにチャージされたことが表示され、友達はカードも一緒に受け取ることができるようになっています。

まとめ:Fコマースの可能性は拡がり続ける

さて、Fコマースの現状を考え、そのメリットについて考えてみました。

Fコマースで直接的な売上を期待することももちろんですが、企業のマーケティング手法として活用できることがわかったのではないでしょうか。

Fコマースの可能性は未知数ですが、「いいね!」など外部サイトに設置できるFacebookテクノロジー、Facebookページから投稿できる「Facebookクーポン」、Facebookと外部サイトの連携、Facebook内の店舗など、無料もしくは安価で始められる仕組みです。紹介したようなメリットを享受するために、実験的に取り組む価値は十分にあると思います。

売上を増やしたいというよりも、Facebookでユーザーによりよい体験をしてもらうという観点で、Fコマースを捉え、どんなことができるかを考えてみてはどうでしょうか。

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