ソーシャルカンファレンス 2012:イベントレポート

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2012年6月8日、「ソーシャルカンファレンス2012」が開催されました。

Social Media Experienceはメディアスポンサーとしてご協力させていただいたほか、パネルディスカッションにも参加させていただきました。
今回はそのイベントの第一部の模様をダイジェストでご報告し、これらを踏まえてこれからのソーシャルメディアについて考えてみます。

総合司会:甲山望美氏

モバイルのその先にある世界への適応はできるか?

「モバイル・グランズウェル」
ITビジネスアナリスト 大元隆志氏

冒頭、大元氏はIT環境を取り巻く環境の変化をあげながら、データ量が圧倒的に増加し、またスマートデバイスが中心となる中で、情報流通と人のつながりの両面で大きく変わっていることを指摘した。その結果として、ビジネスのあり方が大きく変わりつつある現在を強調した。

ITビジネスアナリスト 大元隆志氏

社員が個人所有の端末を業務にも利用するBYOD(Bring Your Own Device)や、個人がソーシャルメディアを使って情報発信をすること、さらにクラウドサービスのストレージにデータを保存するといった環境の変化から、情報の流れも人間の関係も大きく変わっている。よって、ビジネスはソーシャルメディア時代の情報流通設計を考えないといけないという。こうした変化に対応するためには、企業はセキュリティ環境を維持したまま新しい技術も取り入れる柔軟性も求められるようになる。

こうした変化の先にありえるものとして、以下の2つが例として取り上げられた。

・ソーシャルテレビの実用化
 テレビとスマートデバイスが連携することで、人がテレビを見ながら情報を共有したりコンテンツに参加したり、あるいはテレビ側が視聴者データを分析して適切な広告配信を行うなど。

・Google、Facebookなどがラストワンマイルを握る可能性
 インターネット環境に接続するラストワンマイルをこれまでは通信キャリアが握っていたが、今後はインフラ周りも視野に入れているGoogleなどハイパージャイアンツが担うことも考えられる。そうなると、スマートデバイスからのアクセス、コンテンツ利用などがすべてハイパージャイアンツに制御されることになり、将来的な通信の公平性などについては今後注意していく必要があるだろう。

今はまさにモバイル端末を通して現実の世界からデジタルの世界に取引が移っている時代。「変化を驚異ではなくチャンスと受け取ること」が重要と大元氏は締めくくった。

ソーシャルの中から発見を、KDDIの挑戦

「Social Discovery」
KDDI株式会社 新規ビジネス推進本部 オープンプラットフォームビジネス部 パートナーズ推進2・3 GL 傍島健友氏

KDDI株式会社 傍島健友氏

傍島氏は、以下の二つの経営戦略でどちらを目指すのかをKDDI社長と議論をしたという。

・超ネットワーク戦略:回線を磨いて、QoS、高速化を目指す戦略
・脱ネットワーク戦略:上のレイヤー、デバイスだったりも一気通貫でいく

結論として、同社は両方の戦略が必要と考え、それぞれを強化する施策をとることになった。

ソーシャルメディアによって、コミュニケーションがどんどんオープンになり、新しい技術が出てくる中で、オフラインの世界がいろんな形でオンラインでのサービスを取り込むようになっている。「オフラインの現実をもっと楽しむことができる」と傍島氏は述べる。

その事例として、例えばZoffのオンラインのメガネ試着など新しい発想がある。これは自分の顔をWebカメラで取り込んで、その顔画像の上にメガネを載せることでオンラインでメガネを試すことができるというもの。気に入ればそのまま購入することもできる。

洋服、家具などオンラインで試して購入するというバーチャルフィッティングは今後Eコマースを考える上で重要になると傍島氏は言う。

さて、KDDIはこうした流れの中でどこにいくのか。定額でダウンロードし放題の「スマートパス」で、ポータルサイトを利用しなくなったスマフォユーザーとの接点を目指すといったサービスを強化する一方、大学生などと協力しながら新技術についての情報発信をするなど新しい取り組みも始めている。今後はグローバルなビジネスアライアンスも積極的に結んでいきたいという。

NFCを使ったO2Oの可能性を日本から広げていこう

NFCが描く未来像
凸版印刷株式会社 
  凸版印刷(株) 情報コミュニケーション事業本部 TIC マーケティング本部 後藤果奈氏
  凸版印刷(株) 情報コミュニケーション事業本部 TIC ITソリューション本部 名塚一郎氏

凸版印刷株式会社 マーケティング本部 後藤果奈氏(右)同 ITソリューション本部 名塚一郎氏(左)

NFC(Near Field Communication)とソーシャルメディアを組み合わせたO2O(Online to Offline)の実験的プロジェクトを数多く手がける凸版印刷。NFCタグの組み込まれたリストバンドをつけてGAPの店員とハイタッチしてリアル「いいね!」するイベントは記憶に新しいが、これまでも様々な活用方法を検証してきたという。

例えば化粧品メーカーのレブロンのイベントでNFCタグのついたリストバンドを使って商品サンプルにリアル「いいね!」ができるようにしたところ、685回「いいね!」された結果として、22万人にリーチすることができたという。

また、デジタルサイネージと組み合わせ、動画を再生しているタイミングでタッチすると、その商品の詳細がウオールに流れるという活用方法や、マラソンランナーがスタートとゴールで端末にタッチすると、応援メッセージを受け付けたり、結果をFacebookのウォールに流せるといったのO2O事例が紹介された。

海外の事例としては、ブラジルのアパレルメーカーのプロモーションで、ユーザーがFacebookページから商品にいいね!すると、その数が店舗のハンガーにも連動するという事例や、ポスターにつけられたタグにタッチすると友達の数に応じて割引が提供される事例なども紹介された。

今はまだ実験段階のプロジェクトも多いが、今後NFCは日常生活の中で実用化することが予想される。例えば、テレビと結びついてその場で感想を送れるようになったり、ポスターとオンライン画像をつなげたり、と組み合わせ方次第では、新しい生活スタイルも生まれてきそうだ。

ビジネスとクリエティブがつながれば日本のゲームにチャンスあり

成長するソーシャルエンタテインメントのこれから
株式会社comcept CEO/コンセプター 稲船敬二氏

株式会社comcept CEO/コンセプター 稲船敬二氏

稲船氏は、日本のゲーム業界をひっぱてきたゲームクリエイターであり、ロックマン、鬼武者など、数々の名作を世に送り出してきた。

しかし、今の国内のゲーム業界は元気がなく、海外勢力に圧倒的に差をつけられている。稲船氏はこの要因は現在の日本のゲーム業界が、特にソーシャルゲームにおいて「ビジネスとクリエイティブの二つの軸のうち、圧倒的にビジネスに偏ってしまっていること」にあるという。クリエイターの中にはビジネス重視のゲームは作りたくないという人も多く、さらにバランスが悪くなっているという。

稲船氏は、本来人と人とのつながりがあるものはすべてソーシャルゲームだと考えるという。それなのに、デジタルだけに偏って考えるから、発想に限界ができてしまうので、もっと柔軟に考える必要があることを訴えた。

今はソーシャルゲームの規制の問題もあり、厳しい時期だが、この試練を乗り越え、環境やユーザーの意識の変化を受けて「自分たちのアイデアでカバーして面白いことを貫いてほしい」という。

これからはクリエイティブ能力とアナログ的な考え方も取り入れながら、ゲーム作りをして、ビジネスとクリエイティブな世界をつなぎ、日本のソーシャルビジネスが世界を席巻するようになっていって欲しいと期待を込めた。

クローズドコミュニティの分析から見える生活者の本音と愛情

「つながることが価値になる」
株式会社エイベック研究所 代表取締役 武田隆氏

エイベック研究所は、自社サイトにクローズドな企業コミュニティを組み込むサービス、コミュニティで得られたデータ分析などを主力事業としている。

株式会社エイベック研究所 代表取締役 武田隆氏

武田氏は、「ソーシャルメディアはブロードキャストの力を使ってマスメディアからの一方的なメッセージを伝えるのは苦手だが、ユーザーの多種多様な生活のリアリティを表出させることが得意」という。定量的な数値では評価できない、生活のリアリティがみえてくるのだという。

プロモーションへの企業コミュニティの活用事例として、「GO GO pika★pika MAMA」「Dole Marche ドールマルシェ」などが紹介され、クローズドなコミュニティの中で、ユーザーがコミュニケーションを介してコミュニティに関与するなかで「我が事化」が進みブランドへの愛情を育成していくことが示された。

結果として、コミュニティに参加しているユーザーのブランド好感度や年間の購入額が参加していない人に比べて、数倍〜数10倍あがることになる。

後半では、クローズドなコミュニティをリサーチを目的としたMROC(Marketing Resarch Online Community)として活用する事例について語られた。

MROCでは、従来のグループインタビューなどの方式と比較して、立場(役割、地位)、場所的な空間、時間のそれぞれの制約が解除され、より本音に近い意見を聞き出すことが可能だという。

1日1回質問を投げかけ、ユーザーにコミュニティにアクセスしてもらう、というサイクルを3−4日間続けていくと、「修学旅行の夜」のような本音が出てくるという。さらには、数週間にわたるコミュニティが終了すると、参加者からは「寂しい」というような感情が出てくる。

さらに、調査を通して自分の思いを表出する発言の喜び、調査に協力するで社会とのつながりが感じられること、感謝されることによる充実感などがあることから、参加者のうち96%が再度この調査に参加したいと答えるMROCもあるという。

武田氏は、「ありがとう」がたくさん出てくるコミュニティは、活性化し有機的なつながりが生まれていることが多いという。

こうして集められたユーザーの声は、そのまま企業のWebサイトなどで紹介され、コンバージョン率を上げている事例も紹介された。

今後はメディアのあり方として、これまでのような一方的なメッセージを流すのではなく、ユーザーの声をひろい、それを編集、さらに有識者の意見とミックスさせて、情報として返すような「参加型でありながら、オーソライズされた」手法が一般化するのではないかと武田氏はいう。

まとめ:「ソーシャルメディアの次は何?」の答え

最近、企業担当者から「この次のビジネス戦略としてどういうサービスを考えればいいのか」という漠とした質問を受けることがしばしばありました。

ユーザの環境、意識が変わり、オンライン上に巨大なデータが蓄積されていく中で、その変化の大きさは実感できているものの、次の施策を迷っている企業も多いことがわかります。

今回のプレゼンテーションでは、「次」「次の次」を考える上でたくさんのヒントがありました。まだまだ、実用化、現実化するには時間がかかりそうなものもありますが、情報の共有、オンラインとオフラインの融合が進む中で、来るべき社会に適応できるアイデアや技術を育てていける企業がリードしていく時代になるでしょう。

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