Facebookの新機能から考えるコンテンツのこれから

Facebookがタイムラインや新しい広告など、新サービスを続々とリリースする中で、「趣味・関心のリスト」という新機能も登場しました。

これは、任意のFacebookユーザーやFacebookページなどを、リストにまとめて更新情報が見られる機能です。

Facebookは、この機能を「自分が興味のあるトピックなどを、特定のセクションに分けて表示できる自分だけに特化した新聞」と表現しています。

Introducing Interest Lists

Facebookは、以前より、個人のFacebookアカウントをフォローできる「フィード購読」という機能を用意していました。

フィード購読に加え、リスト機能が加わったことで、Facebookが情報発信のためのプラットフォームとしてより強力になったということができます。今回はその理由と、これからのコンテンツのあり方について、考えます。

リスト機能は新聞化でありマガジン化だ

リスト機能では、自分の興味のあるテーマに関連するFacebookページや個人をリスト化して表示することができます。自分でリストを作成し、公開することもできますし、友達だけに公開したり、自分だけの秘密のリストとして管理することもできます。公開されているリストは、他のユーザーが購読することも可能です。

リストの例

すでにいくつかのリストが作成されていて、メディアの記者をリスト化したり、特定のテーマに関連する人のリスト化がされています。リストの編集によって、同じテーマでも流れる情報が変わってきます。

リスト化の方針によっては、様々なトピックの最新情報を表示する新聞というよりも、特定のテーマをいろいろな角度から追う雑誌に近いイメージがあります。

なお、フィード購読の場合は、ニュースフィードに流れますが、リストの場合はまとまって通知され、見る場合はメニューから選択してそのリストの更新を確認します。

友達とのやり取りや好きなブランドの更新情報が中心となるニュースフィードを混沌化させないで、分けて表示できるところが使い勝手があるでしょう。時間があるときなどに、興味のあるテーマをじっくり読みたいユーザーやFacebookページはリストに、常にチェックしたい人はフィード購読というように分けて利用することもできます(なお、表示する情報の量については、フィード購読でもリストでも、任意で変更することができます)。

友達とのつながりから情報発信のプラットフォームへ

Facebookは友達とのつながりを活かして、友達とやり取りするための場所というのが大前提です。しかし、フィード購読やリスト機能が用意されたことで、友達とのやり取りを超えて、自分の興味のあるユーザーやテーマについての情報を収集する場所としての価値も高めています。裏を返せば、情報発信する人にとっては、ブログやメディアと同等の価値を持つような情報発信プラットフォームになりつつあるということです。

以前は、Twitterが速報性の強い情報発信プラットフォームとして注目されましたが、文字数が140文字に限られていること、分割されたツイートが他の人にRTされたり、コメントを加えられることで、誤解を生みやすいという短所がありました。

Facebookの近況の投稿では、最大6万字を入力できますし、シェアされた場合でもオリジナルの投稿を改変することができないので、Twitterで発生してしまう改変という問題を最小限におさえることができると考えられます。

ただし、Facebookのインタフェースは、大量の文字を読むのにはあまり向いていないので、現状では発信者の多くがFacebook上で長文を発表するよりも、他のメディアのリンクのシェアや紹介などを行うという利用のほうが多くなっています。

バイラルの危険性

情報発信のプラットフォームとしてFacebookが力を持つ一方で、誤った情報や真偽不詳の情報が「真実」として一気に広がってしまうという事象も増えています。

誰かが冗談で加工した画像が、シェアされていく間に、真実と誤解されていったこともあれば、意図的にフィクションを真実として流される場合もあるようです。あるいは、オリジナルの発信者がそもそも間違えていたということもあります。

昔からネット上をまことしやかに伝わる偽情報というのは多くあります。Facebookでも、昔からある有名な偽情報が改めて蔓延するということがしばしばあります。

偽情報が蔓延する原因として、背景や事実関係の確認がないまま、情報の受け手が中継者になってしまうことがあります。さらに、実名登録を基本としていることも信憑性を増す要因になっています。東日本大震災の時、Twitterを中心にデマが広がり、「真偽不詳の情報はツイートしない」「公式RTを使って、間違いが発覚したときに一斉削除ができるようにする」といった考え方が広まりましたが、Facebookでも同じことがいえます。

わかりやすさが根本の問題の理解を阻む

Facebookの場合、一見「いい話」「感動話」などの美談がシェアされる傾向が強く、それがフィクションであると判明した後も、美談であるが故に誰も傷つかないため、シェアした人はあまり罪悪感を感じない傾向があります。結果として、Twitterのように教訓が広まらず、偽情報蔓延が再び発生する要因になっているように感じます。

Facebook上でシェアされる情報は、画像であったり、美談であったり、一見するだけでその情報の内容が理解できるものが多くあります。

しかし、そこにはオリジナルの発信者の情報が消えていたり、背景が説明されていなかったりと、文脈が欠落していることが往々にしてあり、切り取られた情報だけを見て、「よい」「悪い」を判断してしまうことがあります。

「短い」「簡単」「釣り」の時代から「長文」「詳細化」の時代へ向かう

ソーシャルメディアやモバイル端末の普及で、ユーザーのWeb体験は、ここ数年間でがらりと変わったといえます。

数年前までは、個人や企業でブログを運営しても、多くの人に読んでもらったり、反応をもらうことは、困難でした。しかし、ソーシャルメディアによって、誰でも簡単によいと思ったものをシェアし、またスマートフォンなどのモバイル端末の普及が、電車の中や喫茶店など、場所を問わずにWebの閲覧を可能にしました。

ソース:デジタル領域における行動・意識に関する調査

株式会社 アイ・エム・ジェイ/IMJモバイル

こうしたユーザー行動の変化に合わせて、Webコンテンツも変わり、シェアされたときの反応を多くするための過剰なタイトルが増えました。

しかし、こうした傾向も徐々に変わっていくのではないかと思えるようなニュースがありました。それが先日話題になったFacebookの共同創業者であるChris Hughesが、歴史ある雑誌「 The New Republic」を買収、オーナーになったというニュースです。

彼が古いスタイルのメディアである雑誌を買収するきっかけとして、以下のような問題への気づきがあったことをNPRラジオのインタビューで答えています。

短い形式のジャーナリズムは現在たくさんある。しかし今日の大きな課題を理解することは不足している。国が直面している問題についてのコンテクストはどこで得られるのか?

彼は、タブレット端末の普及が、長くてしっかり書かれたジャーナリズムを後押しすると考え、「 The New Republic」の買収に至ったとしています。タブレットにより、読者がコンテンツに印やメモを追加したり、しおりを使ったりすることができるようになったため、長いコンテンツが受け入れられる土壌が整いつつあることを感じたからです。

この買収はFacebookの動向には直接影響しないと明言していますが、今後のWebの傾向として、これまでの反動もあって、再び中身の濃いコンテンツが増えていくのではないかと予想できます。

しっかり考えられたコンテンツは新しい議論を生み、問題の根本に近づく

先週、世界的に話題になった動画「Kony 2012」があります。内容はウガンダの反政府組織の活動の停止とリーダーの逮捕などを訴えるもので、30分間の長いドキュメンタリー映像です。この動画は、公開後4日間でYouTubeだけでも4000万回も閲覧されました。シリアスなテーマで長い動画なのに、短期間でこれだけ再生されたのは、この動画を見て感化された人たちがソーシャルメディア上でシェアをしたからです。

この動画がどういう経緯で作成され、どういう形でバイラルしていったかということについては、以下の記事に詳しく紹介されています。映像制作者のチームとNPO組織によって制作され、一般人だけでなく、Justin Bieberなどの有名人も巻き込んでシェアされたことがわかります。

How the Kony Video Went Viral

しかし、同時にこの動画については、反論も多くでました。映像によってウガンダ問題が単純化され、歴史的な背景が削られているという反論で、こうした情報(例Joseph Kony is not in Uganda )もソーシャルメディア上でシェアされています。

この事例は、ソーシャルメディアを介して、しっかりと作られたコンテンツが広まり、多くの人に問題の存在という気づきを与え、さらに次の議論に発展していったという意味で、大変興味深い事例です。

まとめ:Facebookはどこへ向かうのか

私は、Facebookの最近の変化は、友達同士における閉じた空間での情報交換から、特定のテーマに基づいたコンテンツを議論する場へのステップアップだと考えています。

もちろん、これからも友達同士の日常的なやり取りも重要な機能であり続けますが、リスト機能によって、ユーザーが自在に自分だけの新聞、雑誌を作れるようになったことで、より質の高いコンテンツを通して、議論できるようになるのではないでしょうか。

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