ソーシャルメディアのコミュニケーションを担う社員キャラクター:設計と運用

FacebookページやTwitter、Google+ページの公式アカウントの運用方式の一つに、オリジナルの社員キャラクターを使ったコミュニケーションがあります。

有名なところでは、伊藤ハムのハム係長ローソンのあきこちゃんなどがいます。彼らは、ソーシャルメディアのコミュニケーション担当の社員/スタッフとして、会社を代表してユーザーとコミュニケーションをしています。

今回は、オリジナルの社員/スタッフキャラクターを使ったソーシャルメディアの運用について、メリットとデメリット、運用の成功と失敗、キャラクター設定のコツについて考えます。

社員/スタッフキャラクターを使ったコミュニケーションは日本に多い

ソーシャルメディアで活躍するキャラクターの種別、個性、運用している企業などその多様性に驚かされます。

実は、ソーシャルメディアのコミュニケーション窓口担当のキャラクターというのは、アメリカのソーシャルメディア運用ではほとんどみかけません。

ただし、キャラクターそのものがコミュニケーションしている例はあります。人気キャラクターベティちゃんのFacebookページやTwitterアカウントでは、ベティちゃんとしてコミュニケーションしていますし、ソーシャルメディアのマルチクライアントであるHootSuiteもプロダクトのキャラクターであるアウルがコミュニケーションしています。しかし、窓口担当としての社員キャラクターを作っている事例はほとんどありません。

親しみやすく話しかけやすい社員キャラクターを使ってコミュニケーションを活性化する手法は、日本独自の傾向だといえるでしょう。

事例:IKEAもTwitterにキャラクターがいるのは日本だけ。他国はロゴ。

社員/スタッフキャラクターのメリット

なぜ、日本では社員/スタッフキャラクターが人気なのでしょうか。キャラクターを使ったコミュニケーションのメリットをいくつか考えてみましょう。

一人の人物としてみなされるためコミュニケーションしやすい

まず、コミュニケーション窓口担当者として表にでることで、ユーザーはその人の役割を理解し、一人の人として受け入れるようになります。よって、キャラクターという人に対してコメントしたり、その投稿に「いいね!」をすることになり、コミュニケーションしやすくなります。キャラクターの年齢や性別、性格などの特徴がユーザーに認知されると、さらにその傾向は強まります。

一方、企業アカウントとしてロゴなどを使って、担当者の顔を見せずに運用する場合、ユーザーは一人の人というよりも、組織と公式的にコミュニケーションをとっている印象を受けます。無印良品、ポカリスエットなど、こうしたコミュニケーションが成功している事例も多くあります。

声を一定化しやすい

続いて運用面のメリットとして、キャラクターを作ることで、発信するメッセージのトーンやコメント返信の方法など、「声」を一定化しやすくなります。声が一定化することで、ユーザーも安心してコミュニケーションをとることができます。

キャラクターの設定、運用方針が共有されていれば、複数人での運用も可能でしょう。

事例:「こんちには」「こんばんは」必ず挨拶から入る礼儀正しいしずかちゃん。さすが保険会社の窓口担当です。

顔出ししなくても人間的なコミュニケーションが可能

窓口担当にはなったけれど、自分の名前や顔は表に出したくないという人もいます。特に、国内ではまだ社員の実名や顔をアピールするという取り組みは浸透していないため、この傾向が強いでしょう。

キャラクターを作れば、そのキャラクターの顔や名前を使うことができます。顔を出さずに、キャラクターを通して機械的ではない人間らしいコミュニケーションを実現できます。

かわいい、年を取らない、認知度があがれば他の展開も

キャラクターにもよりますが、人気のキャラクターの多くがかわいく、愛着がわくものです。最初はかわいく思えなくても、なじむうちにかわいくなってきた、という人気キャラクターも多いです。

また、キャラクターは年をとりませんし、ずっと使うことができます。担当していた社員が退職ということになっても、そのキャラクターの運用方針を守れれば、キャラクターを変えずにコミュニケーションし続けることもできます。

さらに、これはおまけですが、ソーシャルメディアで人気の出た社員キャラクターの認知度が上がれば、他の販促アイテムなどにキャラクターを使うということもできるかもしれません。

事例:明るく元気なりくるちゃん。少しドジっ娘(?)なところも人気の秘密。

ユーザーと共にキャラクターが育つ

社員キャラクターのいいところは、ユーザーとのコミュニケーションの中でそのキャラクターが一緒に育っていくことです。ユーザーとのやり取りを通して、個性や意外な一面を見せることがあり、キャラクターが確立していきます。

ユーザーがそのキャラクターに愛着を感じると、自ら行動をしてくれるようになります。例えば、NHK_PRの広報のTwitterアイコンのうち、いくつかはユーザーが作成してくれたものです。また、伊藤ハムのFacebookページにはハム係長を模したお弁当やハム係長の顔をしたパンなどの写真が投稿されています。

デメリットは何か?

しかし、社員キャラクターのデメリットもあります。

キャラクター設計のコスト

キャラクターを運用するためには、キャラクターを設計するというステップが重要です。

どういうキャラクターなのか、デザインはどうするのか、名前はどうするかといった基本的な設計に加え、キャラの特徴や性格なども事前に設計します。

設計には、時間とコストがかかります。キャラのデザインをイラストレーターなどに外注する場合も相応のコストがかかりますし、版権の取り扱いなども考慮しなくてはなりません。

認知に一定の時間がかかる

企業の知名度や露出にもよりますが、新しくオリジナルで作ったキャラクターが認知度を獲得するには、ある程度時間がかかります。

いつまでたってもなじまないと、運用方針にブレが出てくることもあります。そうなると、ますますキャラが薄くなり、認知が進まない、コミュニケーションが盛り上がらないという状況に陥りやすくなります。

しかも、ソーシャルメディアでキャラクターを運用している企業はたくさんあります。こうした中で、他のキャラクターと差別化をはかり、ユーザーの印象に残るキャラになるためには、相応の時間と運用の努力が必要です。

キャラクターが嫌いな人もいる

キャラクターが好きな人がいる一方で、キャラクターに対して不快感を持つ人もいます。

不快感の理由は、「子どもっぽい」「真剣さが感じられない」「キャラを作成する意味がわからない」「キャラを作れば受けるという安易な発想」「実名が基本のFacebookなのにキャラがいるのはおかしい」など、様々です。

ソーシャルメディアでターゲットとしているユーザーの特徴や、その人達がキャラクターを受け入れるかどうかを事前によく考えるとよいでしょう。

キャラクターに不快感を持つ人もいるということを理解した上で、キャラクターを使うかどうかを検討してください。

キャラクターを設定するには

キャラクターを採用する場合、詳細なキャラクター設計が必要です。以下のようなことを予め設計しておきます。

キャラクター設計前に考えること

キャラクターを設計する上では、以下のポイントを整理しましょう。これは、ソーシャルメディアを運用するときに考えるポイントと同じ項目です。

・どんな目的でコミュニケーションするのか

ソーシャルメディア運用のゴールの明確化と評価のための目標設計

・誰とコミュニケーションするのか

ターゲットとしているユーザーの定義

・どのように運用するのか

運用ポリシー策定、運用チームと担当者の決定、投稿頻度やコメント返しの方針、問題発生時のエスカレーションの周知など

事例:これも一種の社員キャラクター。クマ研究所所長。

キャラクターの詳細設計

続いてキャラクターの詳細設計をします。マーケティング手法の一つに「ペルソナ」があります。ペルソナでは、ターゲットとなるユーザーの顔、名前、誕生日、職業、経歴、生活、家族構成、趣味などを、一人の人間として事細かに定義します。

キャラクター設定でも、ペルソナと同じように細かくキャラクターの情報を定義しておきましょう。特にそれが表にでてこなくても、運用担当者がバックグラウンドとして認識できていればよいのです。

なお、キャラクターの詳細設計は、実際に運用を担当する人に近ければ近いほどよいと考えられます。なぜなら、その人の声とキャラクターの声がシンクロしやすくなるからです。投稿のテキストやコメントなど、本人が素のまま投稿しても違和感がありません。社員キャラクターであればこの傾向はより強くなります。

一方で、40代の男性が10代の女性キャラクターを運用する、というように、運用者とキャラクターに大きな乖離があるような設計はおすすめしません。

理由は投稿するテキストに不自然な感じがでてしまうからです。ユーザーはキャラクターの設計と実際のコメントに生じる不和を敏感に察知します。かわいい女の子のキャラクターの運用者が男だと気づいたら、「気持ち悪い」「ネカマ」と感じ、去っていくでしょう。

運用者が40代後半の男性であれば、大人の魅力たっぷりの渋いキャラクター、あるいはおちゃめなおじさんキャラクターを作るなど、工夫してみましょう。

ストーリーを用意する

ペルソナにも通じますが、そのキャラクターのストーリーを用意しましょう。なぜ、現在の役割になっているのか、どういうきっかけで現在の会社に入ったのか、など共感できるストーリーを設定します。

こちらも、必ずしも外に出して皆に知らせる必要はありませんが、設定として用意されているのとないのでは、キャラクターの生命力に違いがでてきます。

デザインと名前を用意する

キャラクターの設計に加え重要になるのが、キャラクターの見た目です。キャラの設計に合わせてデザインを用意しましょう。デザイナーやイラストレーターに発注してもよいでしょう。表情やポーズなど、いくつかパターンを用意すると、のちのち便利です。

続いて、キャラクターの名前も重要です。呼びやすく、運用の目的を想起できるものを用意しましょう。

キャラクターのデザインと名前に正解はありません。いくつか案を出してみると、社内で意見が割れることもあるでしょう。そういう時は、運用担当者が「好き」「気に入った」と思ったものを選ぶべきです。

担当者がそのキャラクターに愛情をもてるかどうかというのは、その後の運用の成否に大きく影響するからです。

成功と失敗の境目

さて、キャラクターを作れば成功するわけではありません。キャラクターを作ったけれどもちっともコミュニケーションが盛んにならない、という事例もたくさんあります。

以下の条件をクリアしているキャラクターは、運用面でのひとつの成功であるといえるでしょう。

1. ユーザーから名前で呼びかけられる

2. 友達、先輩などの身近な人に話しかけられるような感じでコミュニケーションが生まれる
3. ユーザーから積極的なアクション(キャラのイラストや写真の投稿など)がある

1、2、3と難易度が上がります。3のレベルまで到達しているキャラクターは数少ないでしょう。

まとめ:社員キャラクター運用は時間と愛情

ソーシャルメディア上の社員キャラクターの設計と運用のポイントについて整理しました。繰り返しになりますが、キャラクターを使えばうまくいくわけではありません。

キャラを設計した後は、運用する人がどれだけそのキャラに愛情と時間をかけて育てていけるかで成否が分かれるでしょう。

ユーザーが好感を持ち、積極的にコミュニケーションをとりたくなるようなキャラクターができるまでには、時間もかかりますが、運用の効果は大きいでしょう。

お知らせ
深谷歩事務所では、企業のソーシャルメディアマーケティング支援として、サイト構築(技術支援)、コンテンツ企画、編集/リライト、ライティング、取材、評価検証などを承っております。ご興味のある方は、お問い合わせからご連絡ください。

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