日本人よりも外国人の所得の方が高くなってしまった現代、企業がさらなる成長を目指すには外国人客（インバウンド需要）をいかに自社に取り入れ集客していくかがポイントとなってきます。
例えば、日本の家計消費は、GDP約540兆円の半分くらいのため、280兆円前後で推移しています。しかし、アメリカはGDPの7割もの消費があります。また、消費者物価指数（CPI）は、2020～2023年区間の変動においてアメリカやイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど主要国に比べて日本は変動費率が低いことです。2022年は同月比4～12％で推移していましたが、物価高などの影響で大きく変化率が下がっており、全体的な傾向として2023年代の大きく下がった中国を除けば、2021年以降ずっと最下位に位置しています。
その上、意識調査などでもあきからなように、海外では日本人の海外旅行に行く頻度が比較して2倍以上の差があります。例として、世界の外国人が海外旅行で消費する支出ランキングでは、サウジアラビアが1位となっており、中国やクエート、オーストラリア、アメリカなどが上位に入っています。この中に日本の名前はなく、海外旅行に対する支出規模の差が明確に出ています。逆に、日本への海外旅行が多く、中国やアメリカが消費額が高いことを考えれば、訪日外国人客を意識した集客は不可欠といえるでしょう。

日本が世界の主要国に比べて消費が低迷している原因は、先行きの不安や消費税増の影響、所得の頭打ち（給与の伸びの低さ）、物価高による日用品や嗜好品の買い控えなどが挙げられます。日本は高齢化が急激に進行し、貯蓄はあっても所得の少ない世代の割合が大きくなっています。当然ではありますが、高齢になるほど収入は落ち、中年が日本での収入最大です。とはいえ、単純な消費は若年層が多く、若年・中年層の消費が全体の消費を決定します。

デフレや経済停滞は、消費への弾みを不十分なものとし、消費税や堅実なお金の使い方など、貯蓄などに回すことも増えているのです。実際、10万円の給付金支給時には、使わずに貯蓄に回したことが度々話題としてメディアに取り上げられたこともあります。経済を回すための消費のはずが、将来の不安感から貯蓄に回し、日本では消費の弱い経済社会を形成し続けているのです。

今現在、日本国内におけるインバウンドのマーケット市場はとても巨大になっております。
かつ、外国人が消費をする金額は日本人の消費金額よりもはるかに高くなっております。

インバウンド需要のマーケット規模が高い理由は、訪日外国人客の購買力とそれを売り込む地域や企業の取り組みの貢献度が大きいでしょう。そこで、消費がどのくらいか確認するには、観光庁が提供する統計情報「訪日外国人消費動向調査」が適しています。この調査では、具体的な消費額とマーケットの規模を明らかにしています。

まず、日本国内におけるインバウンド需要の全体傾向として、新型コロナウイルス感染症の流行時期を除けば、右肩上がりでこの10年変化し続けたことです。2012年代には1兆円台、2014年に2兆円台、2015年には3兆円台と急激なマーケットの成長を見せ、2019年には約5兆円近くまで大きく成長します。ただし、2020年に新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことで状況は一変します。
2020年代と2021年代は新型コロナウイルスの渡航制限や自主的な巣ごもりにより、インバウンドのマーケットは大きな打撃を受けたのです。2020年と2021年の4半期それぞれが0億円の支出状況が確認できないなど、訪日外国人旅行者の消費は大幅に減少しました。その結果、2020年の訪日外国人客の数は概算で約400万人、消費額は約7兆円にまで落ち込みます。2021年も規制が緩和されるまでこの状況は続くこととなり、緩和の拡大後もインバウンドの訪日外国人客の消費額は1,208億円、2022年に8,987億円と低迷します。2022年の消費額と2019年の消費額を比較するとおよそ8割の消費ダウンです。

もちろん、インバウンドの需要が落ち込んだ後の2022年以降は、回復の兆しを見せます。具体的には、2022年第1四半期（1-3月）には、訪日外国人旅行者による消費額が352億円になり、第2四半期（4-6月）では増加して1,047億円です。その後、第3四半期（7-9月）には1,640億円とさらなる伸びを見せ、第4四半期（10-12月）には急激な増加の結果、5,952億円まで大きく増えます。したがって、2022年全体の訪日外国人旅行者による消費額は8,991億円まで回復したのです。2021年の結果と比べれば大きな伸び率であることは間違いありません。そして、2023年は1四半期（1-3月）ですでには1兆103億円の結果となり、年間で5兆円規模のスタートダッシュを切っています。訪日外国人客数の回復も順調で、それを踏まえると、1四半期（1-3月）同様に2023年第2四半期（4-6月）以降も1兆円規模で需要が回復することが想定されるのです。
以下は項目別の消費額です。

宿泊費

2022年の宿泊費は、1人につき6万2,930円となっており、2019年の1人につき4万7,472円に比べて増加しています。上記の増加理由は、全体の旅行支出消費が増えたことと、宿泊日数が増えたことが影響しているでしょう。

飲食費

飲食費も、2022年の1人につき4万5,558円と2019年の3万5,301円に比べて増加しています。これは、訪日外国人観光客が日本の食文化に興味を持ち、食事に対する消費の増加が影響しています。

交通費

交通費も増加傾向にあり、2022年では1人につき2万2,315円、2019年では1万8,149円です。観光地へのアクセスが向上し、訪日外国人がより多くの場所を便利に訪れるための費用として使われやすくなったことが考えられます。

娯楽等
サービス

娯楽等サービス費は、2022年の1人につき6,902円で、2019年の6,300円よりも若干増加しています。地域でのアクティビティが高まり、訪日外国人客がそれらを利用する機会が増えたことが理由として考えられます。

買物代

買物代は、2022年の1人につき6万2,336円で、2019年の5万9,474円に比べて増加しています。これは、免税店の増加や訪日外国人客が日本の商品に対する関心が高まったことが影響しているでしょう。

このように、日本人の消費増加には全体数に限界はありますが、訪日外国人客も含めることで新たな新規顧客と売上利益を確保できるのです。新型コロナウイルス感染症の影響でも大きな回復傾向が見られるのは、インバウンドがいまだ発展途上だからこそです。競合企業よりも先に外国人に日本のインバウンド・観光向けのサービスや商品を売り込むことで有利に立ちましょう。

インバウンド需要のマーケット規模の拡大に関連して、訪日外国人客が増えている理由や背景にはいくつかあります。まず、日本に比べて海外では、所得増や経済の成長、為替レートの影響で海外旅行の経済的な余裕が生まれており、欧米からだけでなくアジア圏からくる訪日外国人客のインバウンドが増えています。特に新興国やアジア圏の国々では、経済成長とともに所得上位層に加えて中間層が増加しており、日本への観光が増加する要因となっています。経済成長によって、国際的なビジネスや交流が盛んになったこともあるでしょう。

では、海外旅行が増えている中で、日本に来る理由は何でしょうか。それは、日本製品が高品質で信頼性が高く世界的に評価されているため、自国では手に入らない商品を買い漁ることにあります。中国では日本の商品の信頼性が高く、類似品が国内で売られていてもあえて日本製を買うほどです。このように、アジア近隣の国々では、特に家電製品や化粧品、食品など日本製品の耐久性や機能性、安全性が高いため、多くの外国人に人気です。そのため、日本（免税店）の製品をまとめて買うアジア近隣の外国人客の増加をもたらし、インバウンド観光増加の背景となっているのです。他にも、理由として以下が挙げられます。

インバウンド需要の背景がわかったところで、今度は将来的にもインバウンドが成長することが期待されている理由について取り上げます。インバウンド需要がこれからも増え続ける理由は、世界のマーケットの拡大と日本への観光に対する関心の高まりです。なかでも、世界は人口増加による成長が著しく、日本のように人口減少とは真逆の状態が進行する状態です。人口が増えるということは単純に観光に来る外国人の母数が増えます。日本の人口が減少しても、インバウンドに関しては影響がほとんどなく、むしろ世界の人口増加がインバウンドによる経済発展を支える肝とさえいえるのです。

また、インバウンドも巻き込むような地域や国策、企業のイベントや受け入れ体制の強化もインバウンド需要を高め続けることが予想できます。外国人が参加しやすいイベントが増えて訪日理由が増えることや興味・関心を醸成することも可能となるでしょう。それだけでなく、日本は2010年代後半になってもまだWi-FiやITによる受け入れ体制は日本人のイメージよりもまだまだ少なく、公共機関を始めとしてこれから強化されることでさらなる満足度の向上が期待されるのです。

インバウンドによる需要が全体で高まることからも、企業はより一層の努力と工夫でインバウンド集客することが求められます。なぜなら、インバウンドで集客することのメリットがいくつかあるためです。まずは、インバウンド増加のメリットとして、訪日外国人による新規顧客の獲得機会が増えることです。ある程度の集客力を生み出し、ノウハウを継続的にインバウンド集客に注ぐことができれば、今後も企業として長期的に売上の向上が見込めます。その理由としては、インバウンドはまだ飽和していないマーケットのため、これからも成長の余地があることです。マーケットが拡大し、訪日外国人客が自然に増えていけば、自社の集客力で客足が増えていく計算になります。

次に、耐用年数の長い商品や頻繁に買い換えない商品、国内では売れいくのよくない商品でも訪日外国人客にとっては需要があるというケースです。新規顧客が多いため、日本で人気がなく種類の少ない商品でも売れることで売上や利益を高めることが可能です。それから、メリットとして客単価の上昇も大きな要因です。客単価は1人当たりが消費する買い物での支出額を指します。特に訪日外国人客は、ショッピングにおいて一度に大きな買い物をする傾向にあり、たくさんの商品を買う客単価の大きい顧客です。つまり、インバウンド集客に注力することで顧客単価を高めて、1人あたりの売上が向上します。

訪日外国人客は、2021年前後に新型コロナウイルス感染症の渡航規制や旅行を控える動きが相まって、日本への海外旅行に行きたくてもいけない状況が生まれました。その影響で、日本での宿泊や温泉の利用やスポーツ（スキーなど）参加、ショッピングはしたくてもできない状況が続いたことです。

なぜ今訪日外国人が日本でたくさんのお金を落とすのかといえば、インバウンドの需要拡大や観光事業の成長というだけでなく、個人単位で外国人が日本でしたいことが増えているからです。それができなかった反動が、現在の大きな原動力になっています。例えば、新型コロナウイルス感染症からの観光機運の回復で爆買が増えているのはその1つです。

また、飲食店なら寿司やラーメンなど食に対する関心、独自文化やおもてなしなら宿泊やスポーツ、イベント、アニメや漫画のサブカルチャーなど、日本でしか味わえない体験が企業の取組により個人が参加しやすいことも、旅行ついでに日本でたくさんのお金を落とす理由です。