ソーシャルメディア効果測定のためのフレームワーク

ソーシャルメディアの企業活用が進み、Facebookページ制作の便利なツールなども充実してきた。企業文化にあわせて自前で制作、自前で運用できるところが、ソーシャルメディアのよいところの一つである。

ただし、自前で制作、運用しても、内部コストや技術費用などがかかる。企業の投資に対するリターンをどう計測するか、あるいは投資効果を評価するかは、ソーシャルメディア運用において忘れてはならない点である。

Social Media Experienceでも、企業のソーシャルメディア運用においての費用と収益については、以下のような記事で取り上げてきた。

ソーシャルメディアを運用するにはいくらかかるのか

データからわかるソーシャルメディアのROI:ROIの平均は95%

記事の中でも、特にROIについては計測方法が企業によって異なり、評価や数値化が難しいことを指摘している。

もちろん、評価の観点はROIだけにあるのではなく、ソーシャルメディアを運用するゴールが企業によって異なる限り、測定方法、評価方法も、それぞれの視点から検討するべき項目である。

今回は効果測定の方法について、以下のAltimeter Groupの調査レポートを踏まえて、国内の現状とあわせて考えてみたい。

A Framework for Social Analytics

計測するための4つのステップ

A Framework for Social Analyticsでは、ソーシャルメディアの効果測定をするためのフレームワークとして以下の4つのステップを提案している。

ステップ1:戦略

ビジネスとして何を達成しようとしているのか、そしてそれをどのように達成しようとしているのかを考える。その上で、どういう指標が必要かを見極める。ゴールや目標によって、測定する項目や手法が異なることに注意したい。

ゴールに基づいて計測する指標を考えるにあたっては、Altimeter Groupの提示する「ソーシャルメディア測定コンパス」が参考になる。コンパスの示す6つの方向が、典型的なソーシャルメディアのユースケースになっている。

それぞれのユースケースについて簡単に説明する。

ブランド好感度

人々がブランドについてのどんな印象、感想を持ち、友達と情報を交換し、どう行動するのか(購入、却下、推薦など)を調べ、ブランドの好感度を計測する。「その商品を友達にすすめるか?」という指標を出すネットプロモータスコア(NPS)なども、ここに含まれる。

事例:新聞「News of the World」の廃刊は、取材時に不正にボイスメールを盗聴したという申し立てに起因する。大手広告主が、ソーシャルメディア上の生活者の反応を見て、自分たちのブランドにも悪く影響すると感じたため、広告出稿を控えたからだ。

マーケティング最適化

「いいね!」やツイートなどのシェア数、コメントなどのソーシャルデータを、マーケティング戦略の評価、次のキャンペーンやコンテンツの企画に役立てる。キャンペーンやコンテンツの目的(認知度向上、売上向上、顧客サポートなど)によって、評価は異なることに注意する。

事例:American Express では、YouTubeとVEVOを使ってデュラン・デュランのライブを配信した。この時、GoogleChatのウィジェットを活用して、どれくらいの人がこのコンサートのことを話題にしているか、その場合、American Expressについて触れているかを調査した。これによりライブ放送が人々の購入意欲やブランド認知にどのように影響するのかを調べ、将来的なプロモーションに役立てることを目指した。

売上向上

ソーシャルメディアと売上の直接的な関係は見えづらいが、コンバージョン率、リード情報の取得などで間接的に効果を測定することができる。よって、ソーシャルメディアが購入の意思決定のプロセスにどう影響するかを理解し、生活者をサポートするように調整する必要がある。

事例:ペット商品を扱うPETCOは、FacebookやTwitterを販売チャンネルとは考えていない。同社のソーシャルメディアは、顧客に自分たちのペットの話をしてもらう場所としてとらえ、製品やプロモーションはほとんどしないようにした。

しかし、ソーシャルメディア上のレビューや評価は、売上につながり、返品率を下げることがわかった。また「Ask and Answer」というコーナーが売上につながることがわかった。「Ask and Answer」を利用するのは1%のユーザーに過ぎないが、そのやり取りがサイト全体の10%の売上向上に影響することがわかった。

ユーザーにとっては、Facebookで熱帯魚のことを友達にシェアしても反応はうすいが、ペット好きの集まるPETCOのFacebookページでは飼育方法や専門的な情報が交換できる。Facebookが友達と話す以上の価値を持つ場所になるのだ。

運用効率化

運用効率化は、ソーシャルメディアを通して顧客サポートなどを行う、あるいはブランドのファンが商品を友人に薦めるといったことによって、従来かかっていたコストにどれくらい削減効果があったかを測定する。

事例:Best Buyのスペイン語専用のフリー電話には、ラテンアメリカの顧客から、「ラテンアメリカで注文した商品をアメリカの友人や家族に受け取ってもらうにはどうしたらよいか」という問い合わせが頻繁に寄せられた。そこで、Webサイトに詳細な説明やフォーラムを載せた。しかし、それはほとんど見られることがなく問い合わせの減少にはつながらなかった。

そこで、注文方法を説明したスペイン語の動画を用意し、スペイン語のWebサイトに誘導するようにした。結果として、電話への問い合わせ件数が半分になった。

顧客体験

ソーシャルメディアを通した体験は、ブランド好感度、売上、コスト削減などに影響するので、ユーザーからのコメントやフィードバックへの反応、危機への反応などをみる。チャンネルやブランドによってユーザーが期待していることは違うことに注意する。

事例:DIRECTTVは、サービスの信頼性を顧客満足度の指標にしている。ソーシャルメディアをモニターすることで、放送中の番組について問題があることがわかれば、番組の中で情報を流したり、視聴者をオンライン、オフラインの両方でサポートできる。ソーシャルメディアで炎上していることがあれば、調べて問題を解決するというように、早期警告システムとして活用している。

イノベーション

クラウドソースのイノベーションとは、ユーザー皆の知恵を集めて新しい商品やサービスを生み出すことである。例えばSturbacksのMyStarbucksIdeas.comは、ユーザーのアイデアや意見を投稿するサイトで、そこから実際に新しいサービスがうまれている。こうしたアイデアやフィードバックは、新しいサービスや商品を提供する機会を創出するだけでなく、ユーザーの要望や不満を改善するというリスク回避でもある。

ステップ2:計測方法

ステップ1で考えたような計測するべき方針や方向性を踏まえた上で、どのようにソーシャルメディアの効果を計測するかを考えていく。

ソーシャルメディアの効果測定については、さまざまな指標や考え方がある。定番になっている評価項目としては以下のようなものがある。

・影響:ユーザーへの影響度

・リーチ:情報の到達度
・エンゲージメント:ユーザーとの交流・親密度
・ポジティブ/ネガティブ:ユーザーのフィードバックの温度

しかし、これらの指標をはかるための定石となった公式はない。また、それぞれの立場によって定義や意味合いも異なっている。

その理由は、ソーシャルメディアを活用する企業によって、エンゲージメント、影響の捉え方が異なるからである。

例えば、メディアのエンゲージメント指標とレストランのエンゲージメント指標を考えてみよう。両者にとってのWebサイトのPV、滞在時間、Facebookページの投稿へのフィードバック、ユーザーからの投稿、レビューの投稿などは、同じようには評価できないことがわかるだろう。

よって、たくさんある指標を参考にしながら、理想とするソーシャルメディアの運用を考えて、マッチする評価方法を考えていかなければならない。

あるプロジェクトで使った指標が、別の異なるプロジェクトでも有効とは限らず、単純に数値だけを比較しても意味がないこともある。

よってFacebookページの「いいね!」の数、Twitterのフォローの数、ポジティブなコメントの数などを計測したら、それが実際にどういう影響を与えるのかを考えなければいけない。例えば、エンゲージメントを評価するにあたっては、「いいね!」の数が増えたら、フィードバックがどれくらい増えるのかを考える。一般的に「いいね!」の数が増えるとフィードバック率は下がると言われているが、何%増えると、何%フィードバックに影響するのかを実測する。

A Framework for Social Analyticsでは、以下のような指標を例としてあげている。

ブランドの好感度

例:シェアされたユーザーの声

ブランドについての言及/競合全体の言及数(競合A+B+C・・・)

売上の向上

例:リピーター率

ソーシャルネットワークを経由してサイトを訪問した人のうち、30日以内に再訪した人/ソーシャルネットワークを経由してサイトを訪問した合計人数

マーケティング最適化

例:類似キャンペーンのエンゲージメント率の比較

キャンペーンAのRT+「いいね!」+一人当たりの購入額/キャンペーンBのRT+「いいね!」+一人当たりの購入額

運用効率化

例:コミュニティの影響度

ソーシャルネットワークやコミュニティに関連した平均購入額/その他のチャンネルによる平均購入額

顧客体験

例:ソーシャルサービスレベル

4時間以内に気づいたソーシャルメディア上で言及された苦情や不満の数/ソーシャルメディア上で言及された苦情や不満の数の合計数

ステップ3:組織

評価を考えるにあたって、社内組織のソーシャルメディアの分析ができる人がいるかどうかを考える。

社内のリソースやスキル、戦略の決定権が誰にあるのか、教育などが必要なのか、外部の専門家や有料ツールが必要なのかを考える。

ステップ4:ツール

最後に戦略、計測方法、組織に適した分析ツールの活用を考える。最も大事な計測ポイントについては有料の計測ツールを活用することも検討する。ツールを利用する場合は、どういう効果をどういう値を使って計測するのかを調査しよう。いろいろな値が測れても、現実的に意味のある数値が計測できるのかどうかも考えなければいけない。収集した数値の評価方法も考える。

ツールによっては、分析内容やデータ量、アカウント数によって有料になるものもあるので、事前の見積りが必要だ。また、無料ツールの場合、インサイトなどの情報をまるごとアップロードしたり、アカウントのアクセス権を渡すものもあるので、企業のセキュリティポリシーも考慮しながら利用を検討する必要がある。

クリック率や間接効果などを測定する場合、URLに特定のコードを入れるなどの追加の作業が必要になる。運用面で煩雑になることが考えられ、計測できる数値とその価値とあわせて利用するかどうかを検討するべきである。

日本語も利用できる評価・分析ツールの一覧をまとめたので参考にしてほしい。

Twitter

Ad.ly Analytics

BELUGA 
bitly
twitraq
Hootsuite
クチコミ係長 
コミュニケーションエクスプローラー 
見える化エンジン 
なずきのおと 
ブームリサーチ 

Facebook

インサイト

Facebook Engagement check tool
Logitter  
AllFacebook
ファン解析ツール

間接効果

ADEBiS
Webアンテナ

ソーシャルメディアで獲得できるデータは重要な資料

今回はA Framework for Social Analyticsを踏まえて、ソーシャルメディアの効果測定について考えてみた。様々なツールやサイトなどで参考になる指標がすでに提供されているが、改めて自社のゴールや目的に合わせてどの評価項目が最適なのかを検討する必要があることがわかる。

ソーシャルメディアの運用において得られるデータはとても貴重なものである。なぜならば、それはユーザーの生の声であり、ビジネスの改善、経営の方向性の決定につながる重要な資料になるからだ。

ソーシャルメディアの運用は、戦略的に企画し評価することで、ビジネスそのものに大きな影響を与えることになる。

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