位置情報の活かし方:参加者をいかに楽しませるか

SCVNGRは、位置情報を利用したゲームプラットフォームである。特定の場所(店舗やスポット)に行ってチェックインし、用意されたゲームに挑戦できるようになっている。

似たようなサービスに、foursquareやGowallaなどが既にあるが、SCVNGRの特徴は、利用する店舗やスポットに対して、オリジナルのゲームを設定することができることだ。例えば、ある場所で写真を撮る、店の特定のメニューを注文するといったことを設定できる。

ユーザーは、携帯電話にアプリをダウンロード(無料)すれば利用することができ、参加することでポイントやバッジの獲得ができ、場合によっては店などが用意した現実の賞品(割引券や無料券、ちょっとしたプレゼント)をもらうことができる。

今回は、ゲーム性を強く前面に押し出したSCVNGRの事例を紹介しよう。

Robbins Diamonds Dash Case Study

PLAY SCVNGR @ JOSLYN: Integrating Location Based Gaming in an Art Museum

トレジャーハンティング:カップルでダイヤモンド争奪戦

Robbins Diamondsは、フィラデルフィアを拠点とするダイヤモンド販売店である。同社が2008年のホリデーシーズン(11月末からクリスマスにかけて、アメリカで多くの人が買い物をするシーズン)を前にしかけたのが、Robbins Diamonds DashというSCVNGRを利用したイベントを開催した。

このイベントのゴールは、ホリデーシーズンを前にRobbins Diamondsの知名度を上げることである。具体的には、テレビや雑誌などの広告費をかけずに、Webサイトのトラフィック増加や来店者数の増加を目指した。

ダイヤモンドリングを探せ!

Robbins Diamonds Dashは、どういうイベントか。

これは、携帯電話のテキストメッセージで送られてくるヒントを頼りに、イベントに参加したカップルがフィラデルフィアのどこかに隠されたダイヤモンドリングを見つけるというものだ。

SCVNGRが開発したSCRMBLというゲームでは、参加者の誰かがダイヤモンドリングを見つけるまで競争が行われる。イベントはなんと8時間という長丁場にわたる。

ゲームの最中、参加しているカップルが特定の場所を通るたびに、携帯電話に様々なヒントと挑戦が送られてくる。これは、SmartRouteという独自の技術を利用している。

最後の挑戦は、City Hall(4ブロックにわたる巨大な建物)の周りをまわって、エアコンの数を数え、終わったらカップルの写真をとり、正解の個数を送るというものであった。

バズの発生

告知の時点で、このイベントは話題になった。ブログやWebサイト、新聞やラジオなどでも取り上げられた。

さらに、実際のイベントでは、勝者となったカップルの男性がその場でガールフレンドの前にひざまずいて求婚するという展開となり、その写真がメディアを大いに賑わせた。

結果

このイベントの結果として、以下のような成果を得た。

・予定参加枠250組のところ、2000組が応募

・600人以上が実際に参加
・25以上の記事に取り上げられる
・地元のテレビニュースに4回取り上げられる
・参加者と応募者あわせて1500人以上の連絡先情報の入手
・Robbins DiamondsのWebサイトのトラフィックが150%増
・120万以上のページビューを獲得
・その他のサイトのページビューなどもあわせると250万以上のページビューを獲得
・1組の婚約成立

ニュースや新聞に取り上げられたことなどは、同社の認知度向上に大きく貢献しただろう。また、カップルで参加できるイベントであることから、そのカップルにとってこのイベントが「楽しい思い出」となれば、以降ダイヤモンドを購入するときに、同社を購入先として検討する確率が永続的に上がるだろう。

クイズで博物館をもっと楽しく

もう一つの事例がJoslyn Art Museumという博物館でSCVNGRを利用した2010年の事例である。

ゴール

Joslyn Art Museumは、もともと地元の名士の寄付によって作られた博物館だ。創設者は市に引き渡すときに「よさそうなことがあったら、何でも取り入れるようにして」と言い残した。

この博物館は、2010年当時、館内での携帯電話の利用や写真撮影を禁止していた。しかし、それは本当に来館者にとっていいことなのかな、という疑問を持ち始めたという。そこであえてSCVNGRの技術を取り入れて最先端のサービスを来館者に提供することにした。博物館では、いくつかの博物館のプログラムにわけて、SCVNGRのゲームを取り入れて、来館者にもっと博物館を楽しんでもらうことを目指した。

グループにわけたクイズやツアーを提供

来館者に携帯電話を使ってクイズやスポットでの写真撮影に挑戦してもらうプログラムを実施した。クイズは正解があるもの、意見や感想などを問うもの、特定の場所にチェックインするものなどがある。

さらにそれを対象者にわけてカスタマイズして提供するようにした。

例えば、子供向け、中学生や高校生に向け、大学生向けのプログラム、博物館のメンバーになっている人向けのプログラムなど、必要に応じて内容やクイズのレベルなどを調整した。以下のようなクイズや挑戦を用意した。

クイズ

「Giorgio Cornaro with a Falcon」という絵を探しましょう。彼の左側にいるのは誰?
a)ねこ, b) さる, c) ライオン d) 犬

挑戦

「Three Guardian Figures」を探しましょう。ガーディアンの場所にあるものがあります。それを自分の猛々しい顔につけて、カメラに向かってポーズ」

挑戦

「Veroneseの描いた「Venus in the Mirror」のところにいきましょう。この絵をみてどう感じますか。女神の愛をどう表現しますか?」

ゲームをクリアすることでポイントが獲得できる。そのポイントに応じてバッジ(デジタルコンテンツ)ももらえる。さらに、その成果を博物館のマネージャーのところにもっていくと、ポイントに応じて博物館のポストカードや本、帽子などがもらえる。

訪問者の評価

訪問者からの評判は上々で、これまでにはない形で博物館を楽しめたことを喜ぶ人が多くなった。

また、以前はマネージャーの席というのは、来館者から避けられがちだった。なかなかそこで博物館の話をしにくる人はいなかったのだ。しかし、賞品の受け渡し場所になったことで、多くの人が立ち寄るようになり、ゲームの話や博物館の所蔵品についての質問、博物館への期待など、フィードバックを直接もらえるようになった。

まとめ:ユーザーが参加できること、楽しめること = 難易度

どちらの事例でもその企業にあったアプローチをすることで、ユーザーに楽しんでもらっている。「Gamification:なぜいまゲーム化なのか 」という記事では、サービスにゲーム性を取り入れたときに、ユーザーにどう楽しんでもらうかを考える必要があることを述べたが、どちらの事例もこの点ではある程度成功している。

foursquareやGowallaと比べると、ユーザーに対してさらにもうひとつのアクションを要求しているのがSCVNGRのサービスだ。通常であれば、ユーザーに課すアクションは少なければ少ないほど敷居が低くなり、ユーザーの利便性は増すはずだ。

しかし、Gamificationというカテゴリに限っては、これは通用しない。むしろ、適度な難易度があったほうが、クリアしたときにユーザーは達成感を感じることができる。何も考えなくともクリアできてしまうゲームほど退屈なものはない。重要なのはバランスだ。

位置情報サービスという比較的新しいサービスはSCVNGRによって一段階引き上げられた今、今までボードゲームやテレビゲームの分野で活躍してきたシド・マイヤーやウィル・ライトなどといった著名なゲームデザイナーがこうしたサービスに関わるのも近い将来実現してくるだろう。

未だ黎明期を脱しきれていないように感じる位置情報サービスを使ったGamificationは、そのときがスタート地点なのかもしれない。

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