データからわかるソーシャルメディアのROI:ROIの平均は95%

企業でのソーシャルメディア運用が定着するに連れて、効果をどのように測定するか、ということが良く話題になる。

ソーシャルメディアと売上の関係をデータから分析する」といった記事でも紹介しているように、ソーシャルメディア活用と売上の向上には、長期的な観点から見ると相関があるといえる。つまり、短期的に評価して継続の判断をするのではなく、長期的に運用し評価する必要がある。

しかし、企業として投資するからには、リターンがなければ難しいということもあるだろう。こうしたときに問題になるのが「どのように投資、リターンを計測するのか」ということだ。

ソーシャルメディアのROIは計測不可能と考えられていた時期もあったが、運用のゴールが定まっていれば評価できるという意見もある。

そこで今回はアメリカの企業がどのようにソーシャルメディアのROIを評価しているのかということについて、以下の調査データ(有料)を元に紹介したい。

2011 Social Marketing Benchmark Report: Research and insights on the monetization of social marketing for ROI

このデータは、2011年2月に3,000社以上を対象にして行われた調査を分析、評価したものである。調査対象の地域は北米(74%)、ヨーロッパ(14%)、アジア(8%)となっている。業種、企業規模、主要セールスチャンネル(BtoC/BtoB/Both)が異なる様々な企業に所属する3,342人のソーシャルメディアマーケッターが調査対象となっている。

ソーシャルメディアのROIとは何か

ROI(return on investment:投資利益率)とは、投資に対してどれくらいの利益(リターン)が得られたかを評価するための指標で、以下の計算式によって求められる。

ROI(%)=利益/投資額×100

この数値が大きくなればなるほど、投資に対して収益性が高いということになる。

ソーシャルメディアのROIについては、この調査対象となった企業は以下のように捉えている。

・ソーシャルマーケティングは明らかにROIを生み出す。ソーシャルメディアへの投資を続けよう:20%

・ソーシャルマーケティングは結果としてROIを生み出す方法だろう。ソーシャルメディアへの投資をするが慎重に。:62%
・ソーシャルマーケティングはROIを生み出さない。なぜさらに投資する必要があるのか。:3%
・ソーシャルマーケティングは基本無料。特に投資はしないで取り組む。:15%

日本国内においては、「ソーシャルマーケティングは結果としてROIを生み出す方法だろう。ソーシャルメディアへの投資をするが慎重に。」という割合が増えているだろうが、まだ「ソーシャルマーケティングは基本無料。特に投資はしないで取り組む。」というようなトライアルフェーズの企業も多いだろうと考えられる。

ソーシャルメディアの投資とは何か

ソーシャルメディアの投資にはどういう項目が含まれるのか。レポートでは、ROIの算出にあたって、投資に含んでいるものについて調査しており、以下のようなものが投資とみなされていることがわかる。

人件費、広告費、アプリケーション利用費、コンサルやコンテンツ制作の外注費などが投資額として換算されていることがわかる。

ソーシャルメディアの利益(リターン)とは何か

投資に対して、利益は評価しにくいものである。利益の計算ができないからROIの評価はできないという意見も多い。

レポートでは、企業に対しROIの算出にあたって、利益に含んでいるものについて調査しており、以下のようなものが利益(リターン)としてみなされていることがわかる。

62%の企業が「ソーシャルマーケティングプログラムによって発生した実際の売上」、13%の企業が「ソーシャルマーケティングプログラムによる顧客獲得、顧客サポートの費用削減」という、実質的に数値としてあらわれるものをあげている。

その一方、トラフィック、リード情報、ファンの数、ブランドの認知度といったものは、価値を価格に換算して計算しているということがわかる。これらをどのように換算するかは、そのソーシャルマーケティングプログラムの目指すゴールによって異なってくる。

実際にソーシャルメディアから売上に結びついた金額や削減できたサポート費用などは、わかりやすいが、短期的にすぐに成果が現れるものではない。トラフィックやファンの数は、数値としては計測しやすいがそれをどう評価するかについては、それぞれの組織で予め計画しておかないといけない。

例えば、以下は以前私がブログマーケティングの効果を考える上で、効果をどのように見積もることができるか、ということを検討した際の資料である。FacebookやTwitter上でコミュニケーションをしているファンやフォロワー数と同等の数の人たちとコミュニケーションを行う場合、他の方法ではいったいいくらくらいのコストがかかるかと考えて、価値を算出するというものだ。

一つの見積方法の参考にしてほしい。

実際に計測されたROIはどうなっているか

では、実際に計測されたROIはどのくらいになっているのだろうか。

以下がそのデータである。

グラフの横軸がROIの値、縦軸が回答者の割合である。例えば、ソーシャルマーケティングのROIは150%と回答した人の割合は10%と読むことができる。

ROIは100%の場合が、投資額と利益が同一だった(トントンだった)ということになる。グラフを見ると、100%と回答した企業が25%ともっとも多くなっている。

全体で見ると平均のROIは95%となる。この結果から、ソーシャルマーケティングは「売上につながる」という予測が現実化する直前にあるといえる。

また、全体の4分の1が100%以上のROIを達成したと回答している。例えば200%と回答した企業は12%であるが、投資額に対して2倍の利益を得たということになる。200%以上のROIを得た企業にとっては、ソーシャルマーケティングが収益性に優れた投資であるということができる。

まとめ:ソーシャルメディアのROIの議論はこれから現実的に

上記はアメリカ企業を中心としたソーシャルメディアのROIの評価についてのデータである。ROIを算出するために投資として算出するコストや利益として算出する項目は、大いに参考になる。調査対象の企業が実際にROIを算出していることから、実践的かつ現実的な方法で評価する段階に入っていることがわかる。

しかし、この調査レポートでは、統一されたROIの算出方法をとっているわけではないことに注意したい。調査からもわかるように、コスト、リターンそれぞれに何を含むかは企業によって異なり、独自の算出方法で計算されている。それぞれのROIがどういう算出方法に基づくのかも知りたいところである。

特に、ファンやフォロワー、トラフィックなど、売上との相関はあるが直接的に計測しにくいものについて、それぞれどのように利益を算出しているのかについては、企業独自の解析となり、「正しい値」というのは存在しない。「価格には換算できるものではない」と考える人もいるだろうが、企業活動を評価するためには、ソーシャルメディアによってつながることのできた人たちとの関係をどう数値化するかが今後のソーシャルメディアのROIを考える上で重要になるだろう。

関連記事


この記事にコメントをどうぞ

Social Media Experience
記事提供
運営会社