そのメルマガは共有したくなるか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

企業のソーシャルメディアの利用が進む中、少し影が薄くなってきているのが、メールマーケティングだ。「これからは、ソーシャルメディア!メルマガのように閉じたメディアを使ったマーケティングは流行らない!」と思われるかもしれない。しかし、実はまだまだその効果はソーシャルメディアを上回るという調査もある。

メールマーケティングと一口に言っても、歴史が長い分、その手法は進化を続けてきた。黎明期の一斉配信に始まり、法律によるオプトアウトの規制、ターゲット配信など、取り巻く環境の変化や効率化などにより様々な手法が編み出された。現在では、メール配信ツールのトラッキング性能の向上により、開封率、クリック率、コンバージョン率などを詳細にトレースすることが可能になり、配信結果を詳細に分析することが一般的になっている。その結果を元に、タイトルやテキストの最適化、さらにはメールリストの最適化などが行われているのだ。

ここ数年はHTMLを使ったメールや、個人の嗜好や購入履歴にあわせたおすすめ情報の配信など、手法が複雑化している。日本国内では上記に加え、携帯メールの3キャリア対応などが実施されている。

このように、メールマーケティングは絶えず進化しているが、ソーシャルメディアの勢いに負けているようにも思える。一部企業ではメールからソーシャルメディアへ予算を移すという動きもあるようだ。

しかし、まだメールマーケティングには進化する余地がある。その一つがソーシャルメディアとの融合だ。

そこで、ソーシャルメディアのビジネス活用については、日本の2年先をいっているといわれているアメリカを中心に、現在メールがどのような位置づけにあるのかという調査レポートを中心に紹介したい。また実際にソーシャルシェアリングを行っているメルマガの事例も紹介し、B2B企業、B2C企業のメール戦略を考えたい。

メールマーケティングはまだ廃れていない

Social Media Examinerがソーシャルメディアマーケッターを対象に実施した調査の2011年版レポートの中に、「2010年、ソーシャルメディア以外で実施したマーケティング手法はなにか」という調査項目がある。

その調査結果が以下のとおり、実に81%が「Eメールマーケティング」をあげていることがわかる。

メールマーケティングの実態

もう一つの調査データは、MarketingSherpaが実施したメールマーケティングの実態調査レポートの2011年版(有料)である。

このレポートでは、業種、企業サイズ、地域(北米78%、他欧州、アジアなど)の異なる1011社を対象にメールマーケティングについて調査した結果をまとめている。

レポートで紹介されているデータの一部を紹介しよう。

2011年の予算割り当て

以下のグラフは、1,115社の企業のマーケッターに対し、2010年と比較して2011年の予算配分をどのように分配するか質問した結果である。つまり、現場の声を反映しているものだ。

Webサイト、SEO、ソーシャルメディア、そしてメールがほとんど予算を減らさないマーケティングチャンネルとなっている。増加の割合は上位3つと比べて下がるものの、42%がメールマーケティングを増加するというのは、やはりまだまだ有効活用するべきチャンネルだということだ。

なお、メールマーケティングの費用の増加率については、以下の通りである。

30%以上:10%
10ー30%:31%
10%以下:23%

ROIについて

なぜ、ソーシャルメディアなどの新興のマーケティング手法が全盛なのに、いわばレガシーともいえるメールが未だに根強い地位を保っているのか。その答えの一つになりそうなのが、メールマーケティングのROIについての考えである。

以下は、メールマーケティングのはROIについての考えを調査した結果を、メールマーケティングの成熟度に分けて分析したものである。

メールマーケティングの成熟度は以下のようになっている。

・戦略フェーズ(37%)
日常作業のガイドラインによる、公式のプロセスを整えている。

・移行フェーズ(49%)
一部の作業のガイドラインがあり、非公式ながらプロセスを整えている。

・トライアルフェーズ(14%)
メールマーケティングのためのガイドライン、プロセスを整えていない。

メールマーケティングを戦略的に実施している企業ほど、ROIを生むことを実感し、予算をつぎ込むことに積極的である。反面、メールマーケティングはタダ、と考え予算割り当てを行わない企業はトライアルフェーズに多い。

このことから、しっかりとした体制のもとに運用すればROIが生まれ、翌年も予算を確保するという傾向があることがわかる。

メールアドレスを収集する施策

メールマーケティングにとって重要な課題の一つがユーザーのメールアドレスの収集である。メールアドレスを収集するための施策についての調査結果が以下のとおりである。

メール内のソーシャルシェアリングボタンが施策の4位に入っていることに注目したい。これは、メールそのものをTwitterやFacebookなどで共有するシェアボタンを設置することである。これにより、メールを購読していない人にもメールの内容を伝えることができ、購読者の増加につなげられる。

使っているソーシャルシェアリングボタンのランキングは以下の通りである。

・Facebook:91%
・Twitter:88%
・LinkdIn:47%

ほかはDiggなどのソーシャルブックマーク系や、GoogleBuzzなどのマイクロブログサービス系などがあるがいずれも20%以下となり、上位3つとは大きく開きがある。USでは、この3つがトレンドになっていることが分かる。

ちなみに、B2B、B2C、両方の3つに企業タイプを分けた場合、Facebook、Twitterの利用率に大きな差はないが、LinkdInはB2Bの企業が75%利用しているのに対し、B2Cの企業は25%しか利用していないという結果になっている。FacebookやTwitterと比べ、LinkdInのシェア機能がビジネスよりの話題をシェアするために利用されていることがわかる。

なお、このレポートでは、メールマーケティングの効果測定方法についての調査結果もある。効果測定としては、クリック率、開封率、到達率などの定番の評価項目が上位を占める一方で、「ソーシャルシェアリングボタンのクリック率」を18%の企業が効果測定として指標にしている。

難易度と効果

レポートでは、メールアドレス収集の施策の難易度と効果についても分析している。それによれば、ソーシャルシェアリングのボタン挿入は、「友達へのメール転送」(クリックすると入力フォームが表示されて転送するもの)に続いて、難易度の低い施策となっている。

一方、ソーシャルシェアリングボタンの導入効果については、非常に効果的/効果的と回答した人は6割にとどまり、他の施策(購入中の登録とダウンロード時の登録はそれぞれ9割が効果的と回答)と比べると、やや効果が下がる。しかし、難易度が低いことと6割が効果を実感していることを合わせて考えてみれば、メールの内容や購読対象者によってはつけたほうがいいだろう。

では、どういう場合に「つけたほうがよい」のか。事例を元に考えてみよう。

ソーシャルシェアリングボタンをつけているメールの事例

では、実際にソーシャルシェアリングボタンを付けているメールの事例を紹介する。なお、ここでいうソーシャルシェアリングボタンとは、単にTwitterアカウントやFacebookページへの誘導ではなく、あくまで、そのメールの内容をシェアするためのボタンであることに注意したい。

以下は、コンペによる広告作成ができるプラットフォームを提供しているZoopaのメールマガジンの例だ。

メールのフッター部にソーシャルシェアリングボタンがついている。上に並んでいる4つのボタンはZoopaのFacebookページやTwitterに誘導するボタン、下に並んでいるのがシェアボタンだ。

実際にシェアボタンをクリックすると、通常のシェアボタンと同じようにFacebook、Twitterでシェアされる。以下はFacebookでシェアしたところだ。

リンクをクリックすると、メールと同じ内容のページにリンクする。このページではメール購読登録のボタンなども用意されている。

そのメールはシェアしたくなるか?

この事例で注目するべきは、内容である。ソーシャルシェアリングボタンをつけるのに適しているメールとは、自分の友だちに共有したくなるような情報が含まれているかどうかである。

上記の例では、ある調査会社によるオンライン広告とテレビ広告の視聴者の受け取り方の違いについての分析レポートを紹介している。この内容はZoopaのメール購読者(広告出稿主、広告クリエーター)にとっては「読みたくなる、共有したくなる」情報である。

この記事の下には、Zoopaのプラットフォームを利用して開催されているキャンペーンの紹介ものっているが、それは後回しになっている。「読者が読みたい情報」と「読者に知らせたい情報」の価値を比較検討した結果の構成であろう。

B2Cの場合は顧客に合わせたものを

B2B企業では、企業の製品情報といった宣伝だけでなく、読者がシェアしたくなる情報を発信できるかどうかが今後のメールマーケティングの成功の可否につながる。

そう考えると、個人の嗜好や販売履歴に応じたリコメンドなどを提供するECサイトなどB2Cの企業にとっては、ソーシャルシェアリングボタンはあまり効果がないかもしれない。あくまでその人個人に適したものをメールでプッシュしているからだ。

以下の例は、ヨガのグッズを販売している企業のメールだ。店のFacebookページやTwitterへの誘導はあるが、ソーシャルシェアリングボタンはない。ただ、「友達へのメール転送」(クリックすると入力フォームが表示されるもの)はある。「今、ヨガブロックを一つ買うともう一つもらえるよ」という情報は、ソーシャルメディアで友達全員に共有するほどではないが、一緒に習っている友達には教えてあげたくなる情報だと言えるため、ソーシャルシェアリングではなく「友達への転送」を付けるという判断なのかもしれない。

メールもシェアされる時代

これまでメールマガジンに登録させるための誘い文句は「メールマガジン購読者だけにお届けする特別な情報」が定番であった。しかし、ソーシャルメディア時代になって、登録者だけに公開するという手法よりも、よい情報を配信して、ユーザーに自発的にシェアしてもらい、それによって次のメール購読者獲得につなげるという手法に移り変わっている。

特にB2B企業がメールマーケティングを行うなら、シェアしたくなる情報と簡単にシェアできる仕組みを用意するべきだ。これはブログマーケティングの手法にも近いものがあり、読まれ共有されるコンテンツを作る必要がある。そのようなオンリーワンのコンテンツを作るのは容易ではないだろう。しかし、母数の増加はいずれ頭打ちになるだろうし、既になっているかもしれない。であれば、いかにコンバージョン率を上げていくかという部分においてソーシャルメディアを活用してみてはどうだろうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。