戦略的コンテンツ:事例と手法

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ビジネスでのソーシャルメディア活用が注目されるのは、これまでとは異なった方式でユーザーとのエンゲージメントを高められるからだ。エンゲージメントとは、顧客と企業との交流であり、またそれを経験したことで生まれる親密度だ。

エンゲージメントを高めることにおいて、コミュニケーションは非常に重要だ。どうやってユーザーの声を聞き、それに応えるかは、ソーシャルメディアを活用するにおいて必ず考えなければいけないポイントだ。

しかし、最近、コミュニケーションの重要性は「当たり前」となり、もはや改めて言う必要はなくなってきた。

ソーシャルメディアの企業利用は次のステップにきている。それが、オンラインにおけるコンテンツ戦略だ。つまり、オンライン上にどれくらい魅力的なコンテンツを用意して、ユーザーを満足させるかということが、エンゲージメントを高める上での鍵になる。

今回は、コンテンツ戦略が重要な理由を例を元に紹介し、さらにコンテンツ戦略を考えるステップ、最後に事例を紹介したい。

コンテンツは人を呼ぶ

先日Twitterであるツイートをみかけた。

「この記事おもしろい!『Webメディア女子がもてるワケ』」

記事内容は、女性を対象にしたインターネットアンケートの調査結果を元に、主にメディア関連の職種についている女性の私生活について分析したものであった。

分析はやや強引だが切り口がおもしろく、また記事のデザインも読みやすく最後までスクロールした。その記事の後半に「肌の悩み」についてのデータが掲載されており、最後には化粧品の製品の案内へのリンクがのっていた。

「おや?」と思って、そもそものサイト構成やタイトルなどを見ると、化粧品会社のWebサイトのコンテンツの一部であることに気づいた。

その記事については、はてなブックマーク、Facebookの「いいね!」も200以上されていた。強引な分析がむしろ「一言言いたくなる記事」になっており、いろいろな人が話題にして、結果として多くの人がソーシャルメディア上でシェアしていたのだ。

本来のターゲットである女性はもちろん、男性も多くそのコンテンツにアクセスしたことがうかがえる。まさに、このコンテンツによって、普段アクセスしない人も呼び寄せたと言える。

コンテンツがあるとどうなるか

この例では、コンテンツがソーシャルメディア上でシェアされることによって、多くの人をWebサイトに誘導していることに成功している。おそらく、この企画者のゴールには「コンテンツを読んだ人が商品案内のリンクをクリックして、購入につなげること」があるだろう。実際に、サイトを訪れたうち数パーセントが購入ページに誘導されたのではないかと考えられる。

しかし、達成したのはそれだけではない。直接の購入には結びつかなくても、企業名、製品名の「気づき」の機会も得た。実際に私はその商品のことを知らなかったので、このコンテンツをきっかけにして知ることになった。

この例のようにコンテンツを用意することで得られるポジティブな側面はそれだけではない。例えば、コンテンツの種類や内容によっては、以下のような効果や成果も期待できる。

・ユーザーの製品/サービスの購入、問い合わせ
・ユーザーの企業/製品/サービスの気づき
・ユーザーからの信頼/好感
・ユーザーの教育、啓蒙
・ユーザーとのコミュニケーション
・業界での地位確立、他企業との差別化
・コンテンツを通したユーザーの反応
・企業、製品のブランディング
・オンライン上の存在感

前述の化粧品の例は、B to Cの事例であるが、コンテンツが重要になるのはB to Bの場合も同じである。

ただし、無闇にコンテンツをオンライン上に公開すればよいというものでもない。効果を最大化するためには、コンテンツ戦略が必要だ。

コンテンツ戦略とは何か

では、コンテンツ戦略とは何だろうか。Web上でのコンテンツ戦略のソートリーダー的存在で、Brain Trafficの創設者であるKristina Halvorsonは、「コンテンツ戦略は役立ち、使えるコンテンツを創作、配布、管理するために計画すること」と定義している。

つまり、コンテンツ戦略とは、コンテンツの内容、配布する媒体や技術、管理や評価の方法をもとに、コンテンツを作成し公開していくことだといえる。

コンテンツ戦略で考えるべき項目

コンテンツといっても、記事、動画、画像、プレゼンテーション、インフォグラフィック、Ustream、FAQ、調査データ、マニュアル、キャンペーン、アプリなどWeb上で公開できるものから、書籍、雑誌、テレビ番組、映画など基本的にWeb上では公開されないもの、あるいはセミナーやイベントなど見る人の空間や時間が限定されるものまでさまざまだ。

Facebookの外部サイトへの誘導効果:ドメインインサイト」でも紹介しているが、ソーシャルメディアでは、コンテンツは共有され、拡散していく。

以降は、特に共有されることを意識したソーシャルメディアにおけるコンテンツ戦略に焦点をあてて考えてみよう。

何のためのコンテンツか

そもそも何のコンテンツが必要なのだろうか。企業、製品、サービスのためのコンテンツであれば、まずはその対象の特徴や機能、ミッションやゴールを整理してみよう。まずは、その対象を誰よりも深く知ることが必要だ。

例えば、ある製品についてのコンテンツを用意する場合、その製品について思いつくことを何でもいいので洗いだしてみよう。何ができて、何ができないのか、どういうメリットがあり、どんな価値を提供できるのか。複数人で洗い出し、その中から特に重要なキーワードやコンセプトを抜き出してみよう。

ゴールを設定しよう

コンテンツによって、何を目指すのかを明確にしよう。

認知度をあげるのか、新しい技術の必要性を伝えるのか、信頼性を得るのか。そのゴールによって作成するべきコンテンツは異なってくる。

ターゲットを意識しよう

誰を対象にしているのかによって、コンテンツの内容も変わってくる。誰が読んだら喜ぶのかを想定しよう。そして、自分だったらどんなコンテンツであれば満足するか考えよう。

例えば、購入のための情報収集をしている人に向けるのであれば、製品の効果やメリット、活用方法などを紹介したコンテンツを用意する。こうしたコンテンツは、購入の意思があり、複数の製品の間で迷っている人にとって、購入判断の材料になる。

どこで公開するのか

Facebookのコンテンツにするのか、Webサイトのコンテンツなのか、Ustreamで配信するコンテンツなのか。またそれを別のメディアで連携するのか、あるいはしないのか。

メディアや技術を考えることで、可能なこと、不可能なことも決まってくる。

コンテンツ企画

これらを踏まえて、どういうコンテンツを、どの媒体に、どういうデザインで、いつまでに公開するのかを具体的に考えていこう。担当する人やチームなども明確にしていく。

評価方法

コンテンツを公開した後の評価方法、または目標を決めておこう。

Facebook上のコンテンツであれば、インプレッション数、フィードバック数(いいね!、コメント)、外部サイトへのトラフィックなどを評価項目にできる。

Webサイト上のコンテンツであれば、Facebook上でのシェア数、TwitterのRT数、ブックマーク数などを評価項目にできる。

もちろん、どんなコンテンツであっても、どのような反響を得ているのか(ポジティブ/ネガティブ)を評価していかなければならない。

さらにコンテンツが最終的なゴールにどのように寄与したかも分析するようにしよう。

以下の図は、ソフトウェアのためのコンテンツを考えたときのコンテンツ戦略を検討した場合の例である。

事例紹介:認知度を向上するためのコンテンツ

最後に、技術の認知度向上をゴールに、一般ユーザーにわかりやすいコンテンツを提供し、そして誰もが参加しやすいキャンペーンを展開している事例を紹介したい。

CreeはLEDライトを製造している企業である。この企業では製品や企業の認知度以前に、技術についての認知度を向上させることを目指している。その名も「Lighting the LED Revolution」だ。

同社のコンテンツ戦略を分析していこう。

B to Cキャンペーン

まずは、一般ユーザー向けのキャンペーンとして行っているのが「CRIES FOR HELP」だ。ここでは、ユーザーに普通のライトを使っている部屋の「がっかり写真」をサイトにアップしてもらう。

毎月1回、一番がっかりな部屋の写真が選ばれ、優勝者には同社の製品のLEDライトが贈呈されるというものだ。

ライトがイマイチでがっかりな部屋の写真という、ユーザーが参加しやすいものを利用することがポイントだ。

コンテンツ戦略を推測してみよう。

ゴール 従来のライトとLEDライトの違いを知ってもらう
ターゲット 一般ユーザー
場所 自社Webサイト
コンテンツ 従来のライトを使った写真をアップしてもらう。アップされた中から毎月一人を選んで同社製品をプレゼント。
ユーザーがアップした写真はすべて公開。コンテストのルールも明確に記述
評価 アップされた写真の点数、ページへのアクセス、シェア数

B to B向けコンテンツ

この企業の主要顧客は一般ユーザーよりも、企業や組織などだ。彼らに向けては、「Revolutionaries」 という事例紹介を用意している。すでにライトの革命を起こした人たちのストーリーということで、どんなふうに施設や建物がかっこよく革命的に変わったのかを紹介している。

例えば、スミソニアン航空宇宙博物館の事例では、新しい展示の中でLEDが利用されていることを紹介している。その中で、展示場の広さや高さなどの条件、展示において要求される温度や湿度要件、1日8時間の照明であれば17年間持続することなどが紹介されている。他にも、アイスクリーム工場や大学などでの導入事例が具体的に紹介されており、大規模導入を計画している企業の参考になっている。

コンテンツ戦略を推測してみよう。

ゴール LEDの大規模施設での導入を増加させる
ターゲット 企業ユーザー
場所 自社Webサイト
コンテンツ すでに導入している事例をRevolutionariesとして紹介。企業が求めた要件や環境条件をLEDがどうクリアしたかを数値や写真を使いながら紹介。
評価 ページへのアクセス、シェア数、企業からの問い合わせ件数

企業公式ブログ:LEDの技術をわかりやすく

Creeの企業ブログもコンテンツ戦略の参考になる。

例えば、溶けていくウサギの動画を紹介した記事だ。

これは、LEDのエネルギー効率の啓蒙をミッションにしている社員の2つのウサギのチョコレートを使った実験の動画を紹介したものだ。一つはLEDのライトの下に、一つは従来の電球の下に飾る。数時間後、従来の電球の下のウサギはどろどろにとける。

従来の電球では90%が熱としてエネルギーが消費されているということを視覚的に表現しおり、LEDの特徴を効果的に伝えている。LEDライトの特徴をよく知っており、また普段からどういう風にすれば、LED技術の特徴を一般の人に理解してもらえるかを考え抜いている人だからこそ浮かんできた企画だろう。

コンテンツ戦略を推測してみよう。

ゴール 従来のライトとLEDライトの違いを知ってもらう
ターゲット 一般ユーザー/企業ユーザー
場所 オリジナル動画はYouTube。それを公式ブログでテキストともに紹介。Facebookページでも動画を紹介。
コンテンツ チョコレートのウサギを使った実験をYouTubeの動画を使って紹介。単に溶けるだけではなく、LEDがエネルギー効率のよい技術であることをテキストで解説。
評価 動画の再生回数、ページへのアクセス、シェア数、コメント数

LEDの誓い:ブログパーツ

JOIN THE REVOLUTIONでは、Webサイトに掲載できるブログパーツを配布している。まず以下のような誓いをたてることを約束する。

・自宅の電気消費量に気をつける
・自宅やオフィスのライトをLEDに変える
・ワットとルーメンの違いを理解する
・友達にLEDRevolutionを紹介する

さらに、自分の名前と地域、メールアドレス(任意)を入力すると、「かっこいい」ブログパーツがダウンロードできるようになる。ダウンロードするためには、地域が必須になっていることから、特にダウンロードが多い地域には積極的に営業するということを考えているのではないかと考えられる。ダウンロードした人が実際にサイトに設置してくれれば、その人が企業活動を広めるのに貢献してくれる。

コンテンツ戦略を推測してみよう。

ゴール 興味あるユーザーの地域データの取得
ターゲット 一般ユーザー/企業ユーザー
場所 公式サイト
コンテンツ 誓をたてた人にブログパーツをプレゼント
評価 コンテンツのダウンロード回数、Webサイトへの設置数

まとめ:価値あるコンテンツに戦略ありき

ソーシャルメディアで共有される記事は、そのコンテンツを見た人に何らかの価値を与えるものだ。

ソーシャルメディアを使ってキャンペーンを打ちたい、マーケティングをしたい、という時には、ユーザーとどういうコミュニケーションを取っていくかということと同時に、どんなコンテンツが用意できるかということを必ず考えるべきである。

できれば、Facebookページ、Webサイト、公式ブログ、YouTubeなど様々なチャンネルを利用して、ユーザーのエンゲージメントを高めていくことが理想である。

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