災害発生直後のツイート分析

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東北関東大震災による大きな被害が出ており、今でも余震が続いている。被災地の方の一刻も早い救出と、復旧を望む。

今回の大地震において、ソーシャルメディアは何ができたのだろうか。私が観察した中では、Twitterによる情報交換、意見交換、主張が激しく行われているように思えた。

ツイート傾向分析調査報告:ツイートから解析する日本の現状」という記事でも紹介したが、Social Media Experienceでは、独自のTwitterのポジティブ/ネガティブを判定するシステムを用意しており、常時、Twitterのデータを収集、解析している。

そのデータを分析したところ、災害発生以降、ネガティブツイートが増えただけでなく、ポジティブ/ネガティブの割合が乱高下するというデータが得られた。

例えば、以下の図は災害発生前の3月10日のグラフと、災害発生2日目の12日のデータを並べたものである。3月10日のグラフは、限りなく平均的な1日の変動に近い。グラフを見ればわかるように、ネガティブがポジティブを上回る時間は少ないのである。

そこで、今回は災害に関連して実際に発生した事象(震度5以上の地震、津波の発生、火災の発生、関係者の記者会見、テレビ放送など)とツイートのポジティブ/ネガティブの影響を分析した結果を紹介する。基本的に、実際の事象が発生した時刻というよりも、事象についての情報が公開された時間との関連をみている。特に福島原子力発電所をはじめとした原発関連の情報はその傾向が強い。

分析対象期間は災害発生日の12日と翌日の13日とした。

なお、今回の記事の根拠となるTwitterの分析システムは、Social Media Experienceで開発したものであり、分析の手法および制限事項については、「ツイート傾向分析調査報告:ツイートから解析する日本の現状」を参照してほしい。あくまで、実験的なシステムであり、判定の精度については参考程度にしてほしいことを合わせて付け加えておく。

もう一点、災害発生以降、被災地にいるユーザーからのツイートは圧倒的に減ったことにも注意したい。よって、結果として分析対象となったツイートは被災地の周辺、あるいは被災地以外のツイートがほとんどとなった。

2011年3月8日から3月13日までのグラフは、以下のとおりである。
20110308 - 20110313

なお、実際に発生した事象の調査にあたっては、以下の情報を参照の上整理した。もし、事実関係や時系列に誤りなどがあった場合は、お知らせいただければ幸いだ。

ソース
官房長官記者発表
政府インターネットテレビ 
気象庁地震情報
日本赤十字社災害救護速報 
経済産業省地震被害情報 
原子力安全・保安院緊急時情報ページ 
NHK広報局のTwilog

2011年3月11日の事象とツイート

14:46 三陸沖にてM7.9(発表当時、以降3回にわたって修正、最終的に9.0に)、震度7の地震発生
大津波警報が発せられる

地震発生した14時には、ネガティブツイートが増え(14%)、ポジティブが急落(6%)する。強い地震にあわてる声が多数見られた。

15:06 三陸沖にてM7.0、震度5弱の地震発生
15:15 茨城県沖にてM7.4、震度6弱の地震発生
各地で津波被害が次々に発生しテレビで放送される。

16時にはポジティブが7%、ネガティブが多くなり17%になる。
テレビで中継された津波の映像のすさまじさに衝撃をうけるツイートが多い。

16:00 首相、枝野官房長官の記者会見にて東北地方太平洋沖地震の発生が発表される。
16:29 三陸沖にてM6.6の震度5強の地震発生

ネガティブが12%、ポジティブが6%。
地震の大きさや各地の被害に驚く声、また続く余震に不安がつのる。
一方でTwitterではお騒がせデマの発生もあった。

デマはこの後もさまざまな形で多発する。なお、この時間に限らず災害発生以降、Twitterの情報の信頼性を疑う声、不用意な拡散を非難する声が上がる一方、自分もデマを拡散しかねない危険性や情報の信頼性を確認してからのツイートの推奨、公式RTの推奨などがTwitterやブログ、メディアなどで紹介されるようになる。

市川の石油コンビナートで火災発生し、都内からも煙が見える。
17:40 枝野官房長官の記者会見にて、首都圏の交通機関麻痺による帰宅困難について注意などが発表される。
17:41 福島県沖 M5.8 震度5強

状況が悪化するもポジティブが増加しネガティブが減少し双方9%に。
首都圏では徒歩により帰宅する人が多く見られた。またタクシーに長蛇の列ができた。
また携帯電話などが繋がりにくい状態が続く。
安否確認ツイートなどが行われる。

影響が首都圏にも派生した不安を受けてか18時台は、ネガティブが急増し17%、ポジティブ10%に。
なお、阪神大震災などの被災経験者からの防災知識、役に立つ物などの知恵やチップスがシェアされるようにもなってきた。

19:03 原子力緊急事態宣言、緊急災害対策本部が設置される。

原発に関する不安がひろがり、ネガティブが14%にポジティブ11%に。
一方で帰宅困難者を中心に励まし合うメッセージも増える。

20:00 原子力災害対策特別措置法の規定に基づく住民への避難指示
気仙沼火災の範囲が大きくなる
20:37 岩手県沖にてM6.4

ネガティブ14%、ポジティブ13%に。
津波に加え、類を見ない大規模火災など、地震の二次的被害が拡大し不安を訴える声が多かった。

21:23 福島第一原発3キロ以内避難指示

原発の危険性が不安をあおり、21時台はネガティブが19%、ポジティブ10%になる。被害状況の拡大に困惑する人も。

22時台には、若干ポジティブが回復し、ネガティブ14%、ポジティブ13%になる。
帰宅ができなかった人のために、複数の施設が開放されるなど、支援が広がるが、ツイートでは疲労を訴える人、帰宅できず状況を報告するツイートが増えた。
一方で、帰宅して家族との無事を確認するツイート、それを喜ぶツイートなども増える。

23時、ネガティブは15%、ポジティブは18%となる。
ポジティブのほうが多くなるものの、夜が更けて続く余震に不安をうったえるツイートが多い。

3月12日

0:15 枝野官房長官による東北地方太平洋沖を震源とする地震についての記者会見が行われる

日付が変わり、午前0時にはポジティブが21%まで増加するが、ネガティブは16%とほぼ横ばい。
この時間のポジティブの割合はほぼ平常どおりであり、就寝前の挨拶が増えたことが影響している。

しかし、1時にはネガティブ18%になりポジティブが12%になる。このとき起きてツイートしている人は不安で眠れない人や帰宅できずに施設などで過ごした人たちの声が多くなっていた。

2時にはポジティブが20%になるものの、ネガティブが19%と微増する。

3:15 枝野官房長官の福島第一原子力発電所、菅総理による被災状況の把握、緊急災害対策本部並びに原子力災害対策本部の招集についての記者発表が行われる。

未明の3時という時間での福島原発の一号機の不具合の発表で不安が一気に広がり、ネガティブが21%、ポジティブが8%になる。

3:59 新潟県中越地方 M6.6 震度6強
4:32 新潟県中越地方 M5.8 震度6弱

寝ていた人、不安のまま起きていた人も異なる震源地の地震発生に驚き怯えるツイートが多発し、鳴り響く地震警報に恐怖する人が多い。4時台はネガティブ21%、ポジティブ9%。この時点では被害の状況も判明せず、地震も続くなか、不安をあおるようなツイート(次の地震予測や災害発生後の犯罪増加など)が増えていく。

5:20 気象庁記者会見
5:42 新潟県中越地方 M5.3 震度6弱

5時台も相変わらずネガティブのほうが多く18%。記者会見では各地の地震の関連性などを説明されるものの、続く中越地方での地震に恐怖が募る。
一方、反動なのかポジティブも増え15%に。

しかし6時になると再びポジティブが11%に下がり、ネガティブが17%に。

7:00 首相被災地にて現場視察

首相の訪問が評価されたのか、7時台にはポジティブが19%になるも、ネガティブも16%。
8時も同じ傾向。前向きなコメントや災害関連の情報のまとめなどがツイートされる。また、歩行帰宅の際にはげましあったというエピソードや支援してくれた人がいたという心温まるツイートも増え、危機をともに乗り越えていこうという雰囲気も生まれていく。

しかし9時にはテレビの被災状況の映像の影響などにより、ポジティブが下がり12%、ネガティブ13%と若干上回る。また、原発に関する情報が不足しており、不安を訴える声が多くなる。

10:00 枝野官房長官による東北地方太平洋沖を震源とする地震、福島第一原子力発電所についての記者会見。

10時台にはポジティブが19%、ネガティブが14%になる。
原発については、適切に処理されており、冷静になるようにうながすようなツイートや、デマを拡散させないための作法の情報などが共有される。

11時台、12時台はポジティブなツイートが増える。またアーティストなどがイラストなどで励ますというような活動も行われるようになり、そうした情報が共有されていく。

13:20 福島第一原発が半径10キロの避難指示
13:30 福島第二原発にて半径3キロ圏内の避難指示、10キロ以内は屋内待避の指示が出る
15:20 福島第一原発の一号機がら核燃料が溶けでているという情報
またほぼ同時期に、第一原発の作業停止情報が出る

しかし13時、14時はまたネガティブが増えてきており、ポジティブは13時から15時台にかけて急下降している。14時台に、長野、新潟で震度3−4の地震があったことや、ニュースなどで原発の情報が取り扱われ、原発の放射能漏れの危険性などがツイートされた。日頃馴染みのない原子力発電の仕組みなどがテレビで解説される。

16:00 節電呼びかけ、輪番停電の可能性
16:30 福島第一原子力発電所の爆発映像が公開

福島第一原子力発所の一号機の爆発映像が放映され、不安が一気に高まりネガティブが21%になる。原発関連のツイートが多くされる。白い煙とともに爆発し、骨組みだけになったように見える一号機の映像がさまざまな憶測を呼んだ。しかもこの映像が1時間前のものだったことなどにより、情報が制御されているのでは、という猜疑心もツイートを通じて連鎖していく。テレビでも、慎重ながらも危険性をうったえる色が濃くなっていった。

17:30 原子力安全・保安院会見
17:46 枝野官房長官による福島第一原子力発電所についての発表
ニュース速報にて、第一原子力発電所の避難区域が20キロに拡大した。

17時にはポジティブが10%まで落ち、ネガティブが20%になった。原子力安全・保安院と官房長官の発表があったものの、具体的な状況や危険性の程度がわからず、不安を余計に煽る結果となったといえる。また何度も会見時間が変更されたことにも不安や不満を訴える声が増える。

この傾向は18時も続き、最悪の状態を危惧するツイートも増えて、ネガティブツイートが24%、ポジティブが12%になった。これまでのところ、ネガティブ24%というのは、計測を初めて以来最低の数字である。

しかし、19時には、不安をあおる声だけではなく、冷静に状況を分析する専門家のツイートなどがひろまったこともあり、ネガティブは減っていった。発表された放射能の量からみて人体への大きな被害がないことなどを冷静に諭すようなツイートや原発についての情報サイトのリンクなどが共有されていく。また、前向きに励ましあうツイートなども増えた。

20:30 首相会見
20:40 枝野官房長官の福島第一原子力発電所について

20時台には、首相と枝野官房長官による会見が相次いで行われ、原子炉の格納機の破損はないこと、放射線の値が下がっていることなどが伝えられた。これにより、安心した人が増えたのか、8時台のネガティブは12%まで下がった。

しかし21時にいったんネガティブが20%まで増え、23時にはネガティブ、ポジティブ両者とも13%となった。

まとめ:Twitterの災害時の情報インフラとしての役割

上記が災害発生時、その翌日のTwitterのポジティブ、ネガティブの割合を分析した結果である。特定の情報が伝播する中で多くの人に希望を与える一方で、不安を煽ることもあった。

特にデマの発生は顕著であった。被害を少しでも軽減させよう、という善意が根拠のない情報の発信につながり、かえって不安を増大させることになっていった。しかし、それを訂正しようという努力、デマが終息していく様子もみてとれた。

こうした中で、RTする前に情報を確認しよう、オリジナルのツイートの発信元の情報を確認しよう、「らしい」「友達の知り合い」などによる情報の拡散はやめようといった趣旨のツイート、RTの作法をまとめたサイトなども発生し、Twitterという比較的新しい情報ツールをユーザーが使う中で、リテラシーを向上させていくことになったといえる。

さらに阪神大震災の経験者からのアドバイスなど、実践的なテクニックなどが共有されていったことから、災害時の情報共有ツールとしてTwitterは一定の評価ができるだろう。

また、テレビ放送、政府の発表、関係機関の公式発表は人の心理に大きく影響することがみてとれた。特に「正しい情報」のソースとしては、テレビや政府の発表は大きな信頼性があった。情報が少ないと人は混乱し悪い方向に考える。冷静な発表があり具体的な説明を受ければ、ある程度人は落ち着く。特に首相などの会見のあとは、ポジティブが増加することから、集団心理を考える上でその影響力の大きさがわかる。

ただし、やはり被災地の人にとっては、インターネット環境はおろか、携帯電話、メールなども通じにくく、生存確認のツールとしての役割をTwitterが果たせたとは言えない。被災状況をツイートした人もいたが、それが可能だった人はごくわずかであったろう。

現在も原発関連の爆発や、地震、津波の警報、首都圏での輪番停電の発表などが続いており、まだまだ状況は見えない。Twitterなどで気軽に情報を発信できるようになった今、枝野官房長官も指摘していたように「迅速かつ正確であることの両立」を考慮し、誰もが適切な情報発信の方法を見つけないといけないようになったといえる。

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