フォードのキャンペーンを成功させた男

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2008年のリーマン・ショックによる金融危機により、アメリカでは自動車業界の経営悪化が話題になった。フォードもその一つで、破綻はまぬがれたが新車販売台数が大きく落ち込んだ。

しかし、2010年3月には販売台数でゼネラル・モーターズを上回るなど、回復の兆しが見えている。

フォードは、2008年からTwitterを開始し、顧客サービス部門にてSocial Media Action & Response Team(SMART)という特別チームを作ってオンライン上での顧客サービスに力を入れ始めた。その後、ソーシャルメディアを活用したさまざまなキャンペーンを精力的に行なっており、顧客のエンゲージメントを高めることに成功している。

そして、フォードのこうした積極的なソーシャルメディア活用を引っぱっているのが、ソーシャルメディアチームのトップであるScott Monty氏である。

なぜ、フォードのソーシャルメディア活用は注目されているのか。Scott Monty氏はいったいどんなキャンペーンを展開しているのか。

ソーシャルメディアチャンネル

フォードが活用しているソーシャルメディアは、Facebook(フェイスブック)、Twitter、Flicker、YouTubeなどに加え、自社メディアであるTheFordStory.comがある。

Facebookのフォード本体のファンページのファン数は、2010年12月現在46万6千人超、Twitterのフォロワー数は同4万2千人超となっている。その他、それぞれ製品に特化したファンページやTwitterアカウントが運営されている。

TheFordStory.comでは、フォードで働く技術者などの話に焦点をあてたビデオに加え、ユーザーが投稿したフォードにまつわる動画やストーリーやアイデアを見ることができる。

「王冠の宝石」と呼ばれるFord Fiesta Movement

Scott Monty氏が自ら「王冠の宝石」と自負するのがFord Fiesta Movementだ。これは、2010年夏に販売開始になった小型車Fiestaのためのキャンペーンである。

特筆すべきが、このキャンペーンが始まった時期である。なんと発売開始の18ヶ月前の2008年から本格的なキャンペーンが始まった。

第1章:欧州版を100台100人のユーザーへ

フォードは、選別した影響力のあるユーザーに、欧州版のFiestaを6ヶ月間渡した。ユーザーは必ずしも一人ではなく、ソーシャルエージェントと呼ばれるチームのようなイメージだ。フォードは彼らにミッションを与え、それに基づいて自由にビデオや写真、イラストなどを作ってもらった。ミッションとは以下のようなものだ。

また、フォードはそれぞれのエージェントにTwitterアカウント、Facebookアカウント、YouTubeアカウント、ブログを用意し、作品を投稿してもらった。

彼らの作品は特設サイトにて見ることができる。

フォードの発表によれば、6ヶ月の間に以下のような成果を得たという。

  • YouTube再生回数4千300万
  • Flickrで50万ビュー
  • Twitterで300万回のインプレッション
  • 5万人の潜在顧客(内、97%が現在フォードを所有していない)
  • 第2章:チームでアート作品対決

    続いてのキャンペーンでは、エージェントに選ばれたチームと、その地域のクリエイターが協力して、ミッションに従った作品を作ったり、イベントを開催したりするというものだ。優勝はHoustonチームになった。

    彼らの作品は特設サイトにて見ることができる。

    現在はFocus Rallyが注目の的

    2011年はFocus Rallyが始まる。これは6チームが全米をラリーしてミッションをクリアしていく競争で、誰でもチームをフォローしたり応援したりすることができるというものだ。

    またチームの様子は動画サイトのHuluで放送される予定だ。

    成功の鍵は何か?

    Scott Monty氏はこうした大規模なキャンペーンを展開した意図として次のように語っている。

    「ファンとの関係を築くために、フォードからのストーリーだけではなく、みんなのストーリーを長い時間をかけて共有することで、ブランドに対する気づき、信頼、ロイヤリティを得ることができる。このことによって、新車の購入という何を買うかを判断しないといけないタイミングで、フォードのことが頭に浮かぶようになるんだ。」と語る。

    そしてキャンペーンの成功の理由として3つあげている。

    フォードという企業に強力なビジネスプラン、良い製品、世間との関わりがあったこと。企業がぶれないから、ソーシャルメディアとしても、本物として共有することができた。

    常に新しいことを行い、コミュニティーに返さなければいけないということを忘れないこと。返すということは、コミュニティーのメンバーの貴重な時間をフォードに費やしてくれたことに対する報酬として返すということ。

    フォードの人間的な顔が重要。これは顧客やファンがお互いに結びつくのと同じように、彼らとフォードの従業員が結びつくのが重要だということ。

    (参考:Social Media Success: 5 Lessons From In-House Corporate Teams (Webtrends))

    まとめ:今、ユーザーが求めているものは何か

    フォードのキャンペーンでは、企業からのメッセージを既存のマスメディアを利用して多くの人に訴えかける従来の広告とは、まったく違う視点からキャンペーンを考えているところが非常に興味深い。

    消費者はもう企業からの広告には飽きて、同じ立場の消費者のアイデアや作品に惹かれるようになってきているように思える。

    ユーザーが作成したコンテンツを中心にしたキャンペーンを成功させるためには、やらせではなく、参加者が自由に活発に情報を発信してくれることが重要だ。よって、こうした活動を積極的に楽しんでくれる参加者を獲得できるかどうかが鍵になるだろう。参加者がおもしろいコンテンツを投稿していけば、それは次第にオンラインでの話題になり、さらに人から人へと伝わっていくものである。

    では、日本でこれと同じようなことを展開したとしたらどうだろうか。長期間にわたっての顔出し、キャラ出しが命となるキャンペーンは、日本の文化にはあわないような気がする。ただ、ユーザーが作成したコンテンツによるコンテストや、地域のチームの応援などのアイデアは、うまく組み合わせれば、おもしろいキャンペーンが実現できそうだ。今、国内のユーザーがおもしろがるものは何かを見極めて、企業のプロモーションを行う方法を考える必要がある。

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