変わる就職活動、オンラインがPRの場

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アメリカではオンラインでの活動が就職時にチェックされるのが一般的になりつつある。しかし、それは「変なこと」をオンライン上でしていないかどうかをチェックされるという側面が強い。

例えば、パーティーで服を脱ぐなどの過剰な悪ふざけやドラッグの利用がうかがえる写真、職場の人間関係の悪口や労働環境の不平・不満などをオンライン上で公開していないかということがチェックされるのだ。こうしたオンライン上の振る舞いが就職活動や人事評価の時にマイナスになり、結果として不採用になったり、職場を追われることにつながるのだ。

しかし、現在の日本では、本名でオンライン活動をしている人の割合が少ないせいもあり、オンラインの活動を就職時にチェックされるという話はあまり聞かない。

むしろ、日本ではオンラインで積極的な活動をしている人が、経営者や人事担当者からよい意味で注目され、そこから採用につながるということがある。

実際、2010年に入ってから、オンラインでの活動や、オフラインでの活動をブログやTwitterで紹介したことがきっかけで、就職や新規顧客獲得に結びついているという例を聞くようになった。今回はそんなエクスペリエンスを紹介しよう。

朝の時間に図書を紹介する会

現在、コンサルタント企業に務めるK氏も、個人的なオフラインの活動がオンラインで注目され、それが転職のきっかけになった一人だ。

K氏の活動とは、「オススメの書籍を持ち寄ってお互いに紹介する会」の開催だ。これまでも、こうした書籍をテーマにした会や活動はあったが、K氏はこれをあえて平日の朝の時間に喫茶店で開催するようにした。開催場所やメンバーの状況によって異なるが、だいたい朝7時から8時の間に行われるのだという。

なぜ、朝なのか

一般的な会社員にとって、平日の出勤前の朝の時間というのは慌ただしく、余裕がないものだ。早起きしてまで勉強目的の会に参加しようという意欲のある人はなかなかいないのではないだろうか。なぜ、その時間に集まることにしたのだろうか。

答えは単純であった。

「自分自身が夜型人間で、朝が苦手だったんですよ。朝の時間を自分のための勉強にあてたり、有意義に使いたいと思ったのですが、一人だとどうしてももっと寝たいの欲望に負けてしまう。そこで、仲間に声をかけて集まるようにしたんです。そうすれば、主催者の自分が寝坊するわけにはいきませんから。」

確かに、勉強のための早起きは自分の意志だけでは続きにくい。

「最初は、自分の友達などを誘って開催していました。それをブログやTwitterなどで紹介していくうちに、どんどんいろいろな人が集まってくるようになったのです。」

1×1を1×nにする

では、なぜ書籍紹介というテーマにしたのだろうか。

「始めたのは3年ほど前で社会人2年目の時でした。そのころ、ビジネスのことをもっと知りたいと思って、いろんなビジネス書を読んでいたんです。だけど、ビジネス書というのは、よくも悪くも一般的な心構えや考え方が多いんですよ。ふと、ビジネス書ばかり読んで納得していただけでは、数年後にはつまらない、面白みのない人間になってしまう!と危機感を感じたのです。

そこで、もっといろいろなジャンルの本を読むようにしたいと思ったのですが、自分一人で選べる本の範囲には限界がある。言ってしまえば、視点を変えて選んでも、選んでいるのが自分である限り、それは1×1なんです。

でも、会の中にいろいろなバックグラウンドを持つ人が集まるようになると、自分では選ばないような本をどんどん紹介されるようになりました。そして、その人がその本を勧める理由を聞くことで、その人が考えていることや興味を持っていることに近づくことができる。視野が一気に広がって、5人集まれば1×5、8人集まれば1×8の視野になるんです。

例えば、会社を経営されている方は、自分の会社の経営理念の元になったような本を紹介してくれる。学生さんは、今学校で研究している内容の本を紹介してくれる。主婦の方は女性ならではの文芸書を紹介してくれる。

大げさに言えば、本の内容とそれを勧める理由を聞くことで、その人の人生の追体験ができるんですよ。みんなで本をテーマに議論することそのものがすごく勉強になるのです。」

活動がネットを通して拡大していく

どのくらいの頻度で開催されているのだろうか。

「1週間の半分くらいは、どこかで開催されています。場所は渋谷や新宿、東京駅など人が集まりやすいところが多いですね。実は、最近は僕が参加するのは1ヶ月に1回ほど。会の趣旨に賛同してくれた方が、分会のようなものを立ち上げて、別に開催するようになっています。埼玉方面でも開催されるようになりましたし、余裕のある土曜日の朝に開催するという人もいます。今はおよそ30人くらいの方がそれぞれ活動しています。」

K氏の活動がブログやTwitterなどを通して、見知らぬ人にまで影響して、会がどんどんいろいろな場所に広がっていったそうだ。

そして、転職のきっかけに

「実はこの活動は、少なからず自分の人生を変えることになったんですよ」とK氏。

この朝の読書会のことは、何度かメディアなどから取材されたこともあるという。そして、それが現在の仕事につながるきっかけも生んでくれた。

「現在の会社の社長がTwitterで声をかけてくれたのです。そして実際に会社に呼ばれて読書会の活動の話をしたところ、大変盛り上がり、そのまま転職することになりました。」

最初は個人的に開催していた小さな会だったのに、その活動が評価されて転職につながったのだ。

「ソーシャルメディアを含め、オンラインでの活動というのは、何かを起こすきっかけになるものです。オンラインで知り合って、実際に会ってみて、その後一緒に何かを始めたり、仕事を依頼するようになったりということも多いですよ。」

まとめ:個人の能力を最大限にアピールできる時代

もちろん、こうした事例は彼だけではない。他にも、個人で運営しているブログが注目されて、引き抜かれるような形で転職したという人もいれば、営業活動を一切していないのにも関わらず、仕事を受注できるようになったという人もいる。

不況が長引く中、就職難が続く。しかし、ブログやソーシャルメディアを使えば、これまでできなかった個人の活動のピーアールが簡単にできる。しかも、それが話題になれば多くの人に注目されるようになる。

採用を担当する側も、面接や試験などでは判断できなかった、個人の才能や個性を見つけ出せる場として、オンラインの活動に注目するようになっている。

ソーシャルメディアはセルフブランディングを可能にした。自分が誇れること、得意なことをオンラインでアピールしていくことは、新しい就職活動の形の一つである。

この記事は実話を基に関係者へのインタビュー、および独自取材により構成したものです。特記がないかぎり、登場する人物・団体の名称は仮名を使用しています。
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