ソーシャルメディアでブランディングは可能か

エンゲージメントは売上につながるのか」では、TwitterやFacebook(フェイスブック)、YouTube、企業ブログなどたくさんの種類のソーシャルメディアを運営し、顧客との高いエンゲージメントを達成している企業ほど、経営状態がよくなっているということを解説した。

このデータから、ソーシャルメディアを活用すれば、売上の向上や収益の改善が期待できるということを紹介した。

しかし、この記事に対する読者からのフィードバックとして、ソーシャルメディアを活用することと、経営成績を直接結びつけるのは難しいという意見もあった。

ソーシャルメディア活用と経営状態を分析した資料などをさらに探す中で、いくつかおもしろい分析を発見したので、それらをもとに今回は以下の点について考えてみたい。

  • 投資効果はすぐにはでない
  • ソーシャルメディアのトップブランドに炎上経験あり
  • ソーシャルメディアの価値はどうはかるのか
  • 投資効果はすぐには出ない

    Twitterを始めたけれど反応がほとんどない、Facebookのファンページに割引券を置いたけど誰も使わない、Webサイトで新商品の名前を募集したけれどほとんど応募がない・・・。

    3ヶ月ほど運営して反応がないと、企業としてソーシャルメディアを活用するのはまだ早い、効果がないという判断をしてしまう企業が多いようだ。

    しかし、ソーシャルメディアの投資効果というのは、これだけの時間をかければ、すぐにこれだけ売上が伸びるというように即座に数値にあらわれるわけではない。

    Twitterのフォロワー数、ファンページのファン数、YouTubeの動画再生回数などの数値は、損益計算書や財務諸表には出てこないし、今すぐの売上に関係しているわけではないかもしれない。しかし、長い目でみると、これらが将来的な売上の増加につながるのである。

    ソーシャルメディアのトップブランドに炎上経験あり

    エンゲージメントは売上につながるのか」では、企業のタイプをソーシャルメディアの活用状況とエンゲージメントの度合いの2つの観点から4つのグループに分類した。

    4つのグループの中でもっとも多くのソーシャルメディアチャンネルを活用し、高いエンゲージメントを実現できている企業は「ソーシャルメディア通」に分類される。このグループに分類される企業は、他の3つのグループに比較して、売上、純利益、ネットマージン(純利益/売上)の年間成長率が最も高いことがわかった。

    このグループに分類される企業には、StartbucksやDellがある。そして、これらの企業は昨日、今日ソーシャルメディアを始めたわけではないし、少なからず失敗もしているということに注目したい。

    炎上の経験がDellを変えた

    Dellは2005年にカスタマーサポートの対応の悪さが多くのブログで話題になり「Dell Hell」という言葉まで生まれた。Dellは当初、この件について当時の企業ポリシーに従い公式にコメントすることなく黙殺していたが、急激な売上の減退を受けて対応を余儀なくされた。

    Dellは顧客コミュニケーションの重要性を認識し、2006年には企業ブログDirect2Dellを開設した。これにより、前年はオンライン上のDellについてのコメントの50%がネガティブだったのに対し、2006年にはネガティブなコメントは23%まで減ったという。

    さらに翌年の2007年には、Dellの製品やサービスをよりよくすることを目指すIdeaStormを立ち上げた。ここでは、自由にアイデアや提案をすることができるし、実際に消費者の意見を元に製品開発につなげている。(参考:Dell Hell :The Impact of Social Media on Corporate Communication

    売上にも影響するように

    こうした炎上を経験し、その反省からソーシャルメディアを活用した顧客エンゲージメントに取り組んでいるDellは、5年後の今はソーシャルメディア通に分類されているのだ。ちなみにDellのアカウントであるDell Outlet の売上は2009年6月時点で200万ドルを超えたと発表している。

    ソーシャルメディアの価値をどうはかるのか

    アメリカの調査会社Forresterのアナリストで、The ROI Of Social Media Marketingというレポートを発表しているAugie Ray氏は、自身のブログの中で、ソーシャルメディアの投資効果を考えるためには、以下の4つの視点が必要だと述べている。

  • 1:経営:売上の増加やコスト削減の効果は
  • 2:ブランド:消費者のブランドイメージは向上したか
  • 3:リスクマネジメント:評価に影響するような攻撃あるいは問題に対して、注意したり反応するための対策が改善されたか
  • 4:デジタル:自社メディアとソーシャルメディアを拡張したか
  • この4つの観点に合わせて、長期的な影響、短期的な影響、経営への直接的な影響度を含めて検討する必要があるという。

    4つの視点の考え方

    経営的な視点では単にTwitterで知らせたキャンペーンに反応して50人の顧客が買い物をしたということだけでなく、複合的に評価する視点も必要である。

    例えば、ある販売業者では、「レビューのない製品と比較して、レビューのついている製品の返品率は20%低い」「25以上の製品レビューのある製品はないものと比べて45%返品率が低い」ということがわかった。これらは結果として、配送料、返品された商品の在庫管理、カスタマーサービスなどのコスト削減につながっているというように評価できる。

    リスクマネジメントの視点では、ポジティブな反応を増やすことよりも、将来的にネガティブな反応を減らすことが目的となる。よって、ソーシャルメディアの運用に必要な経費とともに、ソーシャルメディアがなかった場合に起こり得る損害(謝罪広告、カスタマーサービス、売上の減少、経営陣が対応に追われるコストなど)とその発生頻度を見積もり、さらにソーシャルメディアによってその被害がどれだけ減らせるのか(ソーシャルメディアによってエンゲージした顧客への迅速な対応、それによるカスタマーサービス費用の削減、売上減少の低下など)を考えるべきである。

    ブランドの視点では、ソーシャルメディアにより、ブランドの認知度、購入意思、好み、ファンの数などへの影響を考える。

    デジタルな視点とは、オンライン上の存在感を考えることである。消費者が必要な情報をオンラインで探したときに、的確な情報にたどりつけるようになされているかなどを考える。

    まとめ:最終的にはブランディングになっていく

    4つの視点の図からもわかるように、経営的な視点で評価できるのは2つだけであり、残りは数値には表しにくい。しかし、経営的には直結しない部分の努力が最終的にブランド価値の向上につながっていく。

    ソーシャルメディアを長期的に運営していくことが、先に述べたような「ソーシャルメディア通」グループへの到達になり、結果としてブランド価値の向上、売上の向上が期待できるのである。

    なお、SmartBriefとSummusという調査会社の「The State of Social Media for Business 2010」というレポートによれば、調査対象のうち60%以上の企業がソーシャルメディアを活用しており、うち66.5%が18ヶ月以上前からソーシャルメディアを導入していると回答している。

    その調査によれば、ソーシャルメディアを利用する目的は「ブランドへの気づきと相互連携を増やす」が94.1%でトップ、次いで「顧客とファンを作る」が76.1%で2位となっている。

    この調査結果を見ると、1年半以上運営していく中で、ソーシャルメディアにとって最も重要なことが長期的なブランディングであるということに企業自らが気づいていくようになるということがうかがえる。

    日本ではまだようやくソーシャルメディア活用のスタート地点に立ったという企業が多いだろう。そして、短期的な売上予測を見積もったり、企画の段階で過去の事例や先例の有無を調べている企業もあるだろう。

    ここであえて、ソーシャルメディアで短期間で売上増を期待するのは難しいと言いたい。特にブランディングを目的にするのであれば、企業の個性を無視して別の企業の成功例と似たようなキャンペーンを実施しても、エンゲージメントを高めることにはつながらないと述べたい。

    企業やブランドの特性をいかしたキャンペーンを行いながら、4つの視点を中心に複合的に評価し、長期的に顧客のロイヤリティを高めることが経営的な成長につながるのである。

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