日本にKloutはなじまない

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オンライン上での影響力をはかる指標がいくつかあります。その中でも特にTwitterやFacebookの影響力を表す「Klout」という指標が有名です。

Kloutは、Twitterなどから35以上のパラメータを組み合わせてTrue Reach、Amplification Probability、Network Influenceの3つの指標を算出しています。以下に簡単にそれぞれの指標について説明します。

True Reachは、あなたの発言を聞いているフォロワーの数、Amplification Probabilityは、フォロワーがあなたの発言をRTしたり、@で会話をしている回数、Network Influenceは、あなたのフォロワーの影響度です。

例えば、フォロワーが1000人いても、誰もあなたのツイートをRTしたり、@で返信をしてこない場合はKloutも下がります。逆にフォロワーが100人でも、そのフォロワーの影響度が高く、頻繁に@で会話したりしている場合、Kloutは高くなります。Kloutの算出の詳細については、What is the Klout Score?を確認してください。

アメリカではこのKloutの値に応じた特別サービスなどを検討している企業が出始めました。ネット上のアカウントの影響度を表す指標が現実の生活にも影響するようになっているということです。以下のポイントから考察してみました。

  • Kloutを指標にしている企業の例
  • 企業側から見たメリット・デメリット
  • 個人の生活に与える影響
  • Kloutを指標にしている企業の例

    Kloutを実際に利用している企業の1つが航空会社のVirgin Americaです。Virgin Americaでは、トロントへの新路線を開設したときに、Kloutの高いユーザーにサンフランシスコ/ロサンゼルスからトロントへの往復航空券の無料で提供するというキャンペーンを期間限定で実施しました。

    この時Virgin Americaでは、無料のチケットを手に入れた人に、Virgin Americaについてツイートするとか、新航路についてツイートするといった、要求を一切しませんでした。

    しかし、このキャンペーンのことはたくさんの人にツイートされ、L.A. Timesに取り上げられるなど大変話題になり、新航路について多くの人に知ってもらうことができました。

    このキャンペーンは、サービスを提供しているベンチャー企業であるKloutと共同で実施されました。Kloutは、Starbucks、Dannon Yogurt、Virgin America、Foxなどとも共同でキャンペーンを企画しています。

    これ以外にも、ラスベガスのあるホテルでは、予約時に顧客のKloutを調べ、高い顧客には特別なサービスを提供するなどという取り組みを検討しています。

    企業側から見たメリット:バイラルマーケティング

    こうしたキャンペーンを展開する企業にとってのメリットは、インフルエンサーを使ってソーシャルメディア上で話題にすることができることです。多くの人にメッセージが届き、その評価が購買の判断などに影響を与えるインフルエンサーを取り込むことができれば、効果は大きく新商品やサービスをバイラルにつなげることができます。

    企業側から見たデメリット:差別感と不信感

    しかし、デメリットもあります。Kloutによって顧客に提供するサービスに差をつけることは、優遇されなかった顧客に対し不信感、不快感を与えかねません。

    もし、Kloutによって優遇されたという事実を知らないで、影響力のある人がブログに「◯◯ホテルのアメニティは最高だった!」と書いたらどうなるでしょうか。それを見て期待して来た他の顧客はサービスが違うことにがっかりするでしょう。

    もう一つ気をつけなければいけないことが、特別なサービスをしたKloutの高い人にオンライン上でそのトピックを語ってもらうかどうかということです。この時に特別サービスがあったのかどうか、あるいは別に何らかの費用の支払いがあったのかどうか、などは明示しなければなりません。

    過去の炎上事例には、いわゆるアルファブロガーたちに製品レビューをブログに書いてもらうという企画をしたところ、のちのち彼らに報酬が支払われていたということがわかり、たくさんの批判を集めたというものがあります。

    無償を装った提灯記事は、露骨な広告記事よりも、読者に大きな不快感を与えます。なぜなら、その行為が公正な情報を求める読者の期待を裏切るものだからです。結果として、企業は信頼感を損なうことになります。

    未来:個人の生活に影響を与えるようになるのか

    さて、個人の生活にはどう影響するでしょうか。

    今回紹介した事例では、Kloutを指標としていますが、Twitterでも独自の影響度分析を近いうちに公開する予定です。予測ですが、発言内容やフォロワー属性、リーチできる範囲など、Kloutよりもさらに綿密に分析された影響度がわかるようになるのではないでしょうか。また、その他のサービスでも影響度をはかるサービスが生まれています。今後は、精度争いになるかもしれません。

    そこまで信頼性のある値がでるようになると、実際にその人を評価する値にもなるかもしれません。オンラインマーケティングやソーシャルメディアコンサルなどの職種では、就職の時にその値を評価されたり、顧客への提案時に聞かれたりするかもしれません。

    さらに将来的に、レストランの評価やリコメンドのように、個人に対する評価やリコメンドもできるようになるかもしれません。例えば、この人の営業スキルは5だけど、デートスキルは1というように。しかも、その評価をモバイル端末などですぐに登録したり、調べられるようにするということも技術的には可能です。

    こうしたことが本当に実現した場合、オンラインの影響度だけでなく、オフラインの影響度までが可視化されていくことになります。

    これまで人望がないのに口がうまくて声がでかいというだけで、意見を押し通してきた人が淘汰されるかもしれません。

    日本で流行るか?

    さて、こうしたオンライン上の影響度を測ったマーケテイング手法は、日本で取り入れられるでしょうか。

    私は日本ではあまり流行らないのではないかと考えています。なぜなら、良いにせよ、悪いにせよ、日本では差別化するということに対して嫌悪感を示す人が多いからです。あの企業は特定の人だけ特別扱いしている!という評価が広まると、企業にとっては大きなマイナスです。

    また、Kloutにしろ、その他の指標にしろ、それをアピールすること事態が「はしたない」「浅はかだ」という意見が強いという印象を受けます。アメリカは数値での評価を好む人が多く、数値をあげるための努力をする人を馬鹿にする人はあまりいませんが、日本では嫌がられるでしょう。

    数字には表せない見えない信頼感こそが大事で、Kloutなどの指標は飾りのようなもの、というのが今後の日本のソーシャルメディアのスタンスではないでしょうか。

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