オンライン多重人格

分裂する私と統合するサービス

最近、TwitterとFacebookの連携、Twitterとmixiの連携、Facebookとmixiの連携など、異なるサービスプラットフォームが連携する機能を提供するようになった。あるサービスに投稿した情報が別のサービスに反映されるというものだ。一見、便利なように見えるが、私は絶対に使わないだろう。

ふと疑問に思う。他のみんなは、これまでもそれぞれのサービスで同じような内容の情報を手動でポストしていたんだろうか。というよりも、TwitterとFacebookとmixiで、同じキャラクターとして存在しているのだろうか。

TwitterとFacebookとmixiは、私にとってはすべてソーシャルメディアというくくりに入るものだけれども、それぞれのサービスの中にいる私は異なるソーシャルの中で異なるパーソナリティを持っている。

サービスごとの別人格

Facebookの私とmixiの私はまったくの別人格だ。そして別のオンラインの関係、ソーシャルグラフを持っている。Twitterもそれとは少し違う。さらに言えば、Twitterは2つアカウントを持っていて使い分けている。以下の図のような感じだ。

メインで使っているTwitterアカウントAは、仕事のことを意識して使っている。私の仕事は派遣のプログラマーだ。結婚してから派遣になった。Web系のアプリ開発が得意なので、PHPとかHTML5などの技術的な話題をよくつぶやいている。仕事で知り合った人たちとも相互フォローしているので、エキセントリックなことは言わない。ポジティブで素直、@でのやり取りも多い。フォロワーは100人くらい。アカウント名は、実名に近い文字列で、知り合いが見れば気づくだろうというものだ。

TwitterのアカウントBはサブアカウントで、ガス抜き用アカウントだ。フォロワーは15人くらい。みんなリアルでは知らない人だ。少なくとも私はそう思っている。愚痴とかどうしようもない不安とか、メインのアカウントでは言えないようなことをつぶやく。自分の弱いところや汚いところをさらけ出しているので、リアルの知り合いには見せたくない。ネガティブなことが多いので、本アカウントのフォロワーたちに嫌な思いをさせないための配慮という側面もある。アカウント名は好きな漫画のキャラクターと数字を組み合わせたもの。アカウント名から私をたどることはできない。

mixiは完全にオンラインの人格だ。そもそも誘ってくれたのがオンラインゲームで知り合った人なので、マイミクは全員ネット上の友達だ。リアルの友人や知人は入れていない。こういうユーザーはmixiの中ではちょっと特殊なのかもしれない。マイミクは30人くらいだ。オンラインゲームの攻略日記などを昔は書いていたが、いまはほとんど使っていない。好きな芸能人のコミュニティにもいくつか入っているがたまに見る程度。

最近始めたFacebookは、位置づけとしてはTwitterの本アカウントの雰囲気に近い。ただ、家族旅行の写真やランチや夕飯の写真もあげているので、プライベートも公開している。友達はまだ20人くらい。仕事関係の知り合いや短大時代の友達などがほとんどで、リアルで面識のある人のみを友達として承認している。アカウント名は実名だ。一時期、Twitterの本アカウントと連携させて、Twitterのつぶやきが自動的に同期されるようにしていたが、更新が多すぎるのでやめた。

本物の私への到達

なぜ私はサービスによってキャラクターを使い分けるのか。どれも自分の一人格であるが、どれも私そのものではない。サービスによってソーシャルグラフが違うから、自分のキャラクターをコントロールしているに過ぎない。

人間は社会的な所属や人間関係に頼って自己確認をしていると私は考えている。つまり、関係性の中で自分の位置や役割を意識し、自分が誰なのかを認識しているのだ。異論もあるのだろうが、私にとっての自己認識のもっとも基本的かつ重要なことは他者との関係性なのだ。

TwitterAの場合は、派遣のプログラマーとして働いている私。Facebookは短大を卒業し、いくつかの会社を経て、結婚をしている私。mixiはオンラインゲーム好きで、特定のアイドル歌手に傾倒している私。

サービスの中で構築された人間関係によって分裂したキャラクターを足し合わせたときに初めて私というキャラクターの全体像がおぼろげに見えてくる。全体像を知っているのは私だけで、それをコントロールできるのも私だけだ。各種サービスが連携機能を持つ中で、それぞれ異なるパーソナリティを持つ私のオンラインアカウントは、いまは連携せずにお互いそっぽを向いたままだ。

人は社会や人間関係において、無意識に求められているマスクをかぶる。真実を隠すためにではなく、社会を構成する一員として存在するために。一人の人間が複数の顔を持つのは当たり前。それぞれのサービスの中でその一部だけを見せている。

人間が持つ無意識のマスクを自然に分類し、1ユーザーの多面性を許容するサービスが現れる日が来るのだろうか。

この記事は実話を基に関係者へのインタビュー、および独自取材により構成したものです。特記がないかぎり、登場する人物・団体の名称は仮名を使用しています。

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