コンテンツファームというビジネス

ソーシャルメディアにしろ、Webサイトにしろ、アクセスしてきた人を惹きつけ、興味を持ってもらうために必要なものが「コンテンツ」である。コンテンツには、テキスト、動画、写真、ゲーム、デザインそのものなどが含まれる。

量より質とはいうものの、長期間まったく更新がないWebサイト、ソーシャルメディアは廃れていく。かつて、私が商用メディアを運営していたときには、量を確保するために1日に公開する記事の本数を決めて、それに合わせて準備をしていたこともあった(ただ、あまりにも品質にばらつきがでるので、後々その方針は転換された)。

品質の低いコンテンツよりも高いコンテンツが求められているのは当然であるが、高品質の記事を定期的に作り続けていくのは非常に難しい。そこで注目されているのがコンテンツファームというビジネスモデルである。コンテンツファームというビジネスを成功させている企業の例と、その影響について考えてみたい。

アメリカのコンテンツファーム

コンテンツファームの代表とも言えるのが、Demand Mediaである。この企業は、HowToを集めたサイトeHowなど複数のWebサイトを運営しており、全サイトを合わせると1日に約4,500の記事を公開している。記事を作成しているのは、登録しているライターや編集者たち7,000人である。

ビジネスモデルはシンプルで、あらゆる分野のニッチな記事を大量に配信する。特別におもしろいわけではないが、検索エンジンなどで検索される用語を収拾して読者のニーズをつかみ、平均15-20ドルという低価格で登録したライターに記事の発注をしている。ライターはサイト内に掲載されたテーマにそって記事を執筆し報酬を得るという仕組みである。

公開された記事は、自社で提供しているソーシャルメディアツールを利用し、オンライン上で話題になるようにしかけ、大量のアクセス流入をはかる。このアクセスを見込んださまざまな企業からの広告が収入源となっている。

その他にも、ビデオコンテンツに絞ったHowcastなども注目されている。

日本のコンテンツファーム

日本のコンテンツファームと呼べるのが、ナナピである。こちらもライフハック系の記事をライターから募集し掲載している。記事によって報酬があるものとないものがある。報酬を得るためには、審査基準をクリアする必要がある。報酬はポイント制で1記事あたりおよそ200円〜500円となっている。こちらも主な収入源は広告掲載のほか、企業の要望に応じたコンテンツ作成である。

またコピペタでは、様々なテキストを素材としてWebサイト内で販売している。ライターは記事を登録し、売れたときに報酬が手に入るという仕組みである。

コンテンツファームのよい影響

紹介したようなWebサイトの記事は、一時的な大量ページビューを狙うニュースではなく、いわゆるライフハックやHowToなど、長く読まれる記事である。特になかなか検索しても見つからないようなニッチな情報は価値も高くなる。企業側から必要なテキストを発注する場合、ライターに直接依頼するよりも、安価に抑えられるというメリットもある。

もう1つのメリットが仕事にあぶれたライターの受け皿になっていることである。オンラインに情報があふれるにつれ、出版産業は縮退の一途をたどっている。これまで、書籍や雑誌などで記事を書いてきたライターたちは仕事をなくしている。コンテンツファームがこうしたライターたちの重要な収入源になっているのである。

もちろん、プロのライターではなく、これまで趣味でブログなどで記事を書いてきた人たちにとっても、ライティングにより収入を得るチャンスである。こうしたサイトで報酬を得ながら実績を積むことができるし、読者からのダイレクトな反応が得られることは、とても貴重な経験である。

アメリカの場合は、こうしたサイトへの投稿による報酬だけで生活しているライターもいる。ただし、日本の場合、一般的な雑誌や書籍の原稿料と比較すると単価が非常に安くなっているため、ちょっとしたお小遣い稼ぎにしかならないことが多い。

コンテンツファームの悪い影響

こうしたサイトでは、記事は質より量が重視されている。よって、ライフハックとも言えないようなものや、内容が正確でないものもしばしば見受けられる。こうした記事は、他のユーザーからの編集や評価によって、ある程度精査されていくものの、該当コンテンツの根本的な品質向上には至っていないことも多い。

とはいっても、Web上に公開されているほとんどの記事の品質については、誰もコントロールすることができないので、大量生産による品質低下がコンテンツファームというシステムによる悪い影響と言えるのかどうかは議論が分かれるところである。

需要と供給と評価

コンテンツファームについて調べる中で、こうしたビジネスモデルの企業が概ね成功していることがわかった。多くの人が検索キーワードによってそのコンテンツにたどり着くということは、需要があるということだ。

オンラインの情報を読むときのスピードは、一般的な書籍を読むときのスピードに比べてとても早くなっている。ページをざっと眺めて必要な情報があるかないかを判断し、なければすぐに離脱していくという読み方をする人もとても多い。

記事の品質を考えるにあたっては、そのコンテンツへのアクセス数よりも、記事の完読率、サイト内滞在時間、サイト内のほかのページへの遷移などが重要な指標となるといえる。品質の高い記事なら、読者は一定の時間をかけて全文を読むし、関連記事も読む気になるからである。ざっとしか読まれないのだから、タイトルを煽情的なものにして、文字数を少なくするというテクニックもあるが、それでは読者は離れていくだけだろう。

そしてもちろん、ソーシャルプルーフとなるソーシャルブックマーク数、TwitterのRT数、Facebookのいいね!の数、コメント数などが記事の品質を見える化する。読者はソーシャルプルーフによって記事の品質をある程度判断できるし、また自分の評価を反映させることもできる。

よって、ソーシャルメディア時代においては、悪コンテンツは良コンテンツを駆逐しない。低品質のコンテンツ、低品質のコンテンツしか掲載しないWebサイトは、自然と滅びていくのである。低品質のコンテンツしか提供できないコンテンツファームは滅びるし、大量生産であっても需要のある品質の高いコンテンツを提供していけば、ビジネスとして成功できるのである。

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