ページビュー至上主義の終焉

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エンゲージメントとは何か

ソーシャルメディア関連の記事を読んでいてしばしば見かける言葉が「Engagement」という単語です。英語の文献でもよくこの単語が使われますし、英語の記事を翻訳して紹介している日本語の記事などでもそのまま「エンゲージメント/エンゲージ」と訳している場合があります。

顧客が企業やブランド、WebサイトやTwitterにエンゲージするというのはどういう状態なのでしょうか。そしてなぜ多くの人がソーシャルメディア時代にエンゲージが大事だと言うのでしょうか。

これまでは、Webサイトの価値を評価する際には、そのWebサイトにどれくらいのアクセスがあり、どれくらいのページが読まれたのかを示すページビューが重要な指標の1つでした。しかし、ソーシャルメディアが重要になってきてから、エンゲージメントが高いWebサイトのほうが、ページビューが多いWebサイトよりも、価値が高くなってきています。

今回は以下の点から「Engagement」を考えてみます。

  • 「Engagement」そのものの意味
  • なぜソーシャルメディアで「Engagement」という単語が使われるようになったのか
  • 「Engagement」は数値化できるのか
  • Engagementを定義する

    engage、engagementという単語を「ウィズダム英和辞典」(三省堂)で調べてみました。ソーシャルメディアで使われている意味に近いものを抜粋すると以下のようになります。

    engage <人・物などが><注意・関心>を引く、惹きつける [engage A in B] A<人>をB<会話・議論など>に引きこむ [engage in A] <人が> A<行為など>を行う、Aに携わる、関係する、参加する engagement (よりよい理解のための)<<人・事などとの/...における>>かかわり、ふれあい

    よりよい理解を目指して、触れ合いながら、何かに参加したり、関わったりするというようなイメージでしょうか。例えば、ソーシャルメディアでコメントをしたり、コンテンツをシェアしたりする行為がEngagementに入るように思えます。

    Engagementという単語が使われる背景

    広告やPRにEngagementが必要だということを明確に言い出した団体がAdvertising Research Foundationです。ここには、ARF Engagement Councilという協議会があります。

    ここのWebサイトを調べてみると、Engagementの定義があります。それによれば、Engagementとは「将来の可能性を関連するコンテクストによって強化されたブランドアイデアに向かわせる(”Turning on a prospect to a brand idea enhanced by the surrounding context.” )」ということになっています。

    この定義を支えているのが顧客の行動によってブランドを強化させるという概念です。

    Engagementを数値化する試み

    調べてみると、アメリカでもEngagementの定義が難しく、いろいろ議論されているようです。そのような中で、おもしろいのがEngagementを数学的に定義するという試みです。以下の数式で定義されています。

    Σ(Ci +Di +Ri +Li +Bi +Fi +Ii)

    これは、2008年にJoseph CarrabisとEric T. Petersonという二人の研究者が定義した数式です。彼らの研究成果はこちらのPDFで確認できます。数式の根拠などが詳しく書かれています。

    この中に、Petersonが提唱したEngagementの定義も記載されています。それによれば、Engagementとは、サイト訪問者の交流の度合いや深さであるとされています。

    さて、それぞれの意味は以下のようになります。

    Ci(クリックインデックス) ページとイベントビューのためのクリック数
    Di(持続インデックス) サイト内に滞在した時間
    Ri(再訪インデックス) 訪問者がサイトを再訪問する割合
    Li(ロイヤリティインデックス) サイトに対する訪問者の長期間の交流
    Bi(ブランドインデックス) サイトやブランドの気づき
    Fi(フィードバックインデックス) ダイレクトなフィードバックの数
    Ii(インタラクションインデックス) コンテンツへの投稿や注目レベルをあげるための機能の利用

    これだけでは、どういう数値かイメージがわかないかもしれません。

    数式の値の具体化

    この数式に基づいて、ニュースサイトのphilly.comが具体的な指標でページビューでは測れないWebトラフィックの価値を分析しています。

    Getting beyond just pageviews: Philly.com’s seven-part equation for measuring online engagement

    Ci フォトギャラリーを含まず6ページビュー以上閲覧
    Di サイト内に5分以上滞在
    Ri 日常的に訪れる
    Li サイトへの登録あるいは週に3回以上訪問
    Bi URL直接入力、サイト名をキーにした検索、ブックマークなどによるサイトアクセス
    Ii コメントやフォーラムで交流する
    Pi (参加インデックス)共有、写真、ストーリー、動画の投稿による参加

    先の数式ではピンとこなかった数値のイメージがわくのではないでしょうか。この数値はニュースサイトのものなので、記事が更新される頻度が高いため、CiやDi、Liなどが高くなっています。Philly.comではこの指標を元に自社サイトを訪れる人のEngagementを分析しています。

    Social Media Experienceの場合は、Ciはもっと低くてもよいでしょうし、LiはFacebookでファンになる、メールマガジンを購読するなどが当てはまります。Liは記事へのコメント、TwitterのRTやはてなブックマークなどでコメントを入れるという要素が考慮できます。ただし、読者にとってTwitterやはてなの場合はサイト内への貢献という意識は少ないので、指標を高く設定する必要があります。またPiというのは、オリジナルには含まれていない指標です。

    この数式に含まれるインデックス要素は、ソーシャルメディアにとっては定期的に計測すべき重要な要素です。

    Engagementが成長をうながす

    言葉の定義も数式もEngagementとは何かを考えるのには役に立ちますが、日本語でEngagementを定義するのも、その価値をはかるのもやはり難しいです。

    ページビューを伸ばすための方策はこれまでさんざん議論されてきました。SEO対策、興味を惹くタイトル、関連リンクへの誘導、1つの記事を複数ページに分割するといった方策です。しかし、これからはページビューではなく、エンゲージメントを高める方策が求められるようになるでしょう。自分のWebサイトにとってEngagementとはどういうことを指すのか、そしてどういう数値でEngagementを評価できるのかということは、ソーシャルメディアを運用する上でとても重要です。

    なお、Social Media ExperienceというWebサイトが考えるEngagementは「サイトを訪れ記事を土台にアイデアの交換をはかること」です。

    そして最終的にそうしたアイデアの交換というEngagementを通して、Webサイトと読者の両方に新しい可能性や成長のきっかけが生まれることを目指しています。

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